紅の花舞
□十八、花簪に揺れて
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「おい小娘!
断るとはどういう了見だ!?」
「やめてください、離してっ!」
「民草のために日々攘夷を論ずる我ら志士に、酌の一つや二つ、むしろ自分からするのが当然であろうが!」
聞こえてきたのは怒鳴り声。
女の子が浪士達に絡まれているではないか。
総兄と私はほぼ同時に双方の間に分け入った。
「やれやれ。
攘夷って言葉も、君たちに使われるんじゃ可哀想だよ」
「おじさんたち、もてないでしょ?
そんな事してるんじゃ」
出で立ちを見て、浪士たちが一斉に顔を強張らせた。
「浅葱色の羽織…新選組か!?」
「知ってるなら話は早いよね。
…どうする?」
唇に三日月を刻むと、総兄がゆっくりと刀の柄に手を伸ばす。
「くそっ、幕府の犬が…!」
浪士の一人が悔しげな声で悪態をつき、足早に逃げていく。