紅の花舞
□二十二、友達できました
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一ちゃんが店主に話をしている間、入口に立っていると、
「おいおいおい、道を開けやがれ!
勤王の志士様がお通りだ!」
突然、大きな声が店の中まで聞こえてきた。
見ると、通りの向こうから、柄の悪い浪士達三人が、周りの人を威嚇しながら歩いてくる。
「おら、邪魔だって言ってんだろ!」
そのうちの一人は、路地で遊んでいた子供を蹴飛ばそうとする。
すると、一人の女の子が、子供をかばう様に立ちはだかった。
「やめなさいよ、みっともない!」
ドクン
「――!」
その女の子を見た瞬間、私の胸に鈍い痛みが走った。
まずい、と思ったが、その痛みはすぐにひいていく。
「あぁん!?何だてめぇは!」
その声にはっとすると、浪士は目をむいて、女の子に掴みかかろうとしている。
私が止めに入ろうとした時、見慣れた小柄な人物が間に割って入った。
「…あなた方がお国のために尽くそうという高い志をお持ちなら、なぜか弱い女子供に暴力を振るおうとするのですか?
町人を守ってこその侍でしょう!」
千鶴は少し震えていたけど、それでも退こうとはしなかった。
刹那、浪士が刀を抜く。
「一ちゃん!」
「ああ、わかっている」
それと同時に、私達は駆け出していた。