紅の花舞
□二十四、言の葉ひらひら
2ページ/10ページ
そんな中、ふと辺りを見回したとき――。
「あれ?」
人混みの中に知った顔を見つけた。
あそこにいるのは…薫さん!?
千鶴に似ているその顔立ち。
見間違うはずもない。
だけど、その姿はあっという間に人混みの中に消えていく。
「――薫さん!」
「ちょっと!」
思わず駆け出そうとした私を、総兄が鋭く呼び止める。
でも、今追わなければ薫さんを見失ってしまう。
「――ごめん総兄!ちょっと忘れ物したから先に行ってて!」
私は彼の制止を振り切って、人混みの中へ飛び込んだ。
「やれやれ、まだ外に出たばかりだと思うんだけど。
一体どこに何を忘れたって言うんだろうね?」