紅の花舞 弐
□三十二、蒼い月光
2ページ/18ページ
十二月十八日。
新選組は他藩の戦力と共に、伏見奉行所の守護を任されていた。
「…本当に大丈夫なんですか、近藤さん」
私が聞くと、近藤さんはいつものように笑った。
「もちろんだとも!護衛の中には島田くんもいるんだ。心強いさ」
私と歳兄は、軍議に参加するため二条城へ向かう近藤さんの見送りをしている。
近藤さんが護衛を三人しか連れていかないと言ったからだ。
今は不安定な時で、いつ敵が現れるかわからないというのに…。
「…何だかやけに胸騒ぎがしやがる。やっぱり、護衛を増やした方が…」
「トシ」
不安げな顔をする歳兄を、近藤さんがなだめるように止める。
「そんなことをしては、こちらの警備が手薄になってしまうだろう。俺はな、奉行所の人員を割いてまで護衛をつけたくはないのだよ」
私と歳兄は顔を見合わせる。
幕府のお偉い方の中には、新選組をよく思わない人もいる。
そんな中に多くの護衛を連れていけば、ここぞとばかりに弱虫呼ばわりされるのは目に見えている。
「…近藤さん、気をつけて下さいね」
「ああ、では行ってくる」
大きな背中が去っていくのを、私達はずっとみつめていた。