紅の花舞 弐
□三十三、堕ちてゆく
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「じゃあ、薫が近藤さんを…!」
「俺だって悪気は無かったんだよ?新選組局長ともあろう人間が、まさかあんなに油断してるとは、夢にも思わなかったからね!」
総兄が飛び出す寸前、薫はぱちんと指を鳴らした。
物陰に隠れていた浪士達が、私達を取り囲む。
「…ずいぶんわかりやすい罠だなあ」
「それって負け犬の遠吠え?」
二人は冷笑を浮かべていた。
「だけど、相手は新選組の沖田と奏樹だ。銃で狙ってもなかなか当たらないだろうね」
「悪いけど君の口調、いちいちカンに障るんだよね。言いたいことがあるなら、単刀直入に言ってくれる?」
「お前に話してるわけじゃないよ」
薫はくすくすと笑いながら、ぐるりと周囲を見渡す。
「万全の体調じゃない方から狙ったほうが楽かもね、って倒幕派の皆さんに提案してるだけ」
そう、全ての銃口は発作で動けない私に向けられていた。
「…卑怯な手段だ」
「何とでも言えば?」
…全部の弾は無理だけど、1つくらいなら不知火の時の様に斬れるかもしれない。
私が空舞桜に手をかけたと同時に、藩兵の鉄砲が火を噴いた。