紅の花舞 弐
□三十三、堕ちてゆく
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――刀を抜く事はできなかった。
「ぐっ…!」
銃弾から庇うように、総兄が私を抱き締めたから。
「――総兄!?」
私が顔をあげると、総兄は苦しげな表情をしていた。
「…どこも、痛くない…?」
「私は大丈夫…大丈夫だよ…!」
総兄が守ってくれたから、弾丸は私にかすりもしていない。
「…なら、いいんだ」
私を包む両腕から力が抜け、ぐらりと彼の身体が揺れた。
「総兄!?」
倒れた彼の身体を抱き止める。
あちこちから流れ出る血は止まる気配がない。
(どうして…!?どうして傷が塞がらないの…!?)