紅の花舞 弐

□三十四、覚悟を手にして
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――それからどうやって屯所に帰って来たかは、よく覚えていない。


総兄の傷が塞がらない理由は、山南さんにもわからなかったのだ。


まだ目を覚まさない彼を私は一人眺めていた。



(…また、私のせいで総兄が傷付いた)



私が鬼でなければ、薫との確執がなければ。



そんな思いがとめどなく溢れる。



「…ごめんね…総兄…」



そっと総兄の手を握る。



「…次は、必ず私が守るから」


――たとえこの命に代えても。



私の頬を雫が静かに伝った。




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