紅の花舞 弐
□三十九、舞い落つ願い
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「そんなに俺が信じられないなら、綱道おじさんの診療所に行ってみれば?何かみつかるかもね」
「綱道さんの…?」
確か、綱道さんの診療所は江戸にあると言っていた。
羅刹についての資料も、何か残っているかもしれない。
「…どうして、そんなこと教えてくれるの…?」
――薫は、私や千鶴を憎んでいるはずなのに。
すると、先ほどまでの笑みをふっと消し、薫は私から目をそらした。
「そういえば、どうしてだろうね。…お前が、―――だからかな」
「…え?」
薫が何と言ったのかは聞こえなかった。
だけど、ぽつりと呟いたその表情が寂しげに見えた瞬間、少しだけ発作が弱くなった気がした。
「…かお――」
気づいたら、薫の姿はなくなっていた。