紅の花舞 弐
□四十九、残花
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「よし、撃て…」
他の兵に届く前にその声は掻き消された。何故なら私がその声の主を斬ったから。
「な、何だこいつは…!?」
動揺した兵が銃を乱射する。その流れ弾が数発、腕や足をかすったが痛みは感じなかった。構わず次々と敵を斬り捨てていく。彼らが放つ弾よりも、私の動きの方が何倍も速かった。
「ひ…!や、やめ…!」
恐怖に顔を歪ませ助けを乞う者も、逃げ出す者もいたが、そんなことはどうでもよかった。この場にいる者は敵。いま動いている者は全て、敵。そう私の中の何かが言っていた。
気づくと、私の周りにはたくさんの屍が転がっていた。もう動くものは何もない。あるのは赤に染まる骸と、静寂だけ。
「ふふふ……あははははは!」
大切な人を奪ったから、同じことをした。ただそれだけ。なのにどうしてこの空虚感は満たされないのだろう。
これが私の 守る剣?
四十九、残花