紅の花舞 弐
□四十九、残花
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日差しが照り付ける中を私は懸命に馬に乗って道を急ぐ。ひたすら馬を走らせているのに加え、変若水の影響で日の光がますます私に苦痛を与えていた。
でも、休むことはできない。近藤さんが刑場へ出る前に早く着かなくては。早く、あの人を助けなければ。
木々が段々開けて、光が見えてくる。この森を抜けたら板橋の刑場まではすぐだ。
どうか、どうか間に合って。
そうひたすらに願う私の目に飛び込んできたのは、たくさんの人々の姿だった。すでに刑場には大勢の見物人が押し寄せてきていたのだ。軍鶏篭に入れられた人物が皆の前へと引き立てられる。
髷はだらしなく乱れ、無精ひげも伸び放題。だが遠くからでも私にははっきりとわかる。刑場の中央へと歩いて来たあの人は――。
「――近藤さん―ッ!」