黎明の空の果てに
□紅緋の雲
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「これからどうすっかなぁ…。」
槍術の道場を離れた俺は、行くあてもなく江戸をぶらぶらとしていた。
持ち金もそんなにある訳ではない。
道端でのたれ死ぬのも時間の問題かと悩んでいた時。
「なんだとこのガキ!」
突然どこからか怒鳴り声が聞こえてきた。
「何だ…?喧嘩か?」
興味本意で声のした方へ行ってみる。
声の主は、酔っ払いの親父だった。
そしてそいつに向かい合う様に、買い物の帰りなのか荷物を持った女…いや、少女が立っている。
「この俺様にぶつかっておきながら、土下座の一つもないとは何事だ!」
「だから、ぶつかってきたのはおじさんの方からだって言ってるでしょ!それにこの子も、ちゃんと謝ったじゃない!」
よく見るとそいつは背中に小さな子供を庇っている。
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