紅の花舞
□五、 その瞳に宿りし光は
1ページ/11ページ
―京に着いてから、どれくらいの月日が過ぎたのだろうか。
ゆっくりと流れていく雲を見上げながら、僕は縁側に腰かけた。
最近、こうやってぼーっと過ごす事が多くなった気がする。
近藤さんには、具合でも悪いのかと心配されたぐらいだ。
別に京へ来た事を後悔したりしてる訳ではない。
新選組の剣として、近藤さんのために戦う事が、僕の一番望んでいる事だから。
じゃあこの感じはなんだろう?
すると、不意に美しい黒髪に紅い瞳のあの子の姿が浮かんだ。
「…奏樹ちゃんがいないからかな。」
芹沢さん達がいた時は、近藤さんの役に立つ事で頭がいっぱいだった。
彼らがいなくなってから、あの子の事を考える時間が増えた気がする。
最後に見た奏樹ちゃんは、京へ向かう僕らを目に涙をいっぱい溜めて見送っていた。
彼女の姿が小さくなってもそこに立っているのがわかったけど、振り返る事はなかった。
振り返ったら、今にも泣き出しそうだったから。
.