紅の花舞
□九、 動き出す、時
1ページ/9ページ
小鳥のさえずりで目が覚める。
「ここは―。」
(! そうだ、私浅葱の羽織を着た人達に会って―。)
起き上がろうとするけど、手足が縛られていて動けない。
どうしようと考えていると、
「おーい、起きてるー?」
部屋の外から聞き覚えのある声がすると同時に、障子が開けられた。
入ってきたのは、二人の男の人。
「おはよう。外はいい天気だよ!」
「すまないね、こんな扱いで。いま縄をほどくからね。」
そう言って拘束を解いてくれる二人のうち、一人には見覚えがあった。
「ありがとうございます、葉城さん。」
「どういたしまして。
名前、覚えててくれたんだ。」
そう言って微笑む葉城さんはすごく綺麗で、思わずみとれてしまった。
「あ、源さんとは初対面だよね。」
「初めまして、私は井上源三郎。ここ新選組で六番組組長をやらせてもらっているよ。」
優しそうなその笑顔に、井上さんはいい人だろうなと思った。
.