紅の花舞
□十三、血の饗宴
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―亥の刻。
私達が池田屋に着いてから、随分と経った。
しかし、会津のお役人は一向に現れる気配がない。
「……さすがに、これはちょっと遅すぎるな」
「近藤さん、どうします?
これでみすみす逃しちゃったら無様ですよ?」
それまでずっと沈黙を守り続けていた局長は、不意に立ち上がると千鶴の肩を叩いた。
「雪村君。
君に一つ頼みたい事がある。
四国屋にいるトシ達のもとへ、本命は池田屋と伝えてきてくれないか。」
千鶴は一瞬目を見開いたけど、まっすぐ近藤さんを見てから
「…わかりました!」
と言って走り出した。
その背中を見送ると、近藤さんは私達を見回す。
私達はそれに頷き、池田屋に踏み入った。
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