紅の花舞

□十五、知らないままでいい
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ある日の朝食後。



奏樹ちゃんが千鶴ちゃんと一緒に、お盆にお茶をのせて運んでくる。


小姓でもない彼女が雑用をしているのは、きっと自分から手伝うって言ったんだろうな。


奏樹ちゃんらしいや。



「八木さん達にも世話になったが、この屯所もそろそろ手狭になってきたか」


「そうさなぁ。平隊士の奴等も雑魚寝させてるしな。」


「だけど僕達新選組を受け入れてくれる場所なんて、何か心当たりでもあるんですか?」



僕が聞くと、土方さんは薄く笑って返答した。



「西本願寺」


それを聞いて、僕は思わず笑ってしまう。


「あははは!
それ、絶対嫌がられるじゃないですか!
…反対も強引に押し切るつもりなら、それはそれで土方さんらしいですけど?」



すると、それまで黙っていた山南さんが口を開いた。


「僧侶の動きを武力で押さえつけるなど、見苦しいとは思いませんか?」


たしなめる様な口調には、隠しきれない苛立ちがのぞいている。


「トシの意見はもっともだが、山南君の考えも一理あるなあ」


近藤さんは感心したように、うんうんと何度もうなずいていた。


「さすがは近藤局長ですねぇ。
敵方へまで配慮なさるなど懐が深い」


「む?そう言われるのはありがたいが、俺など浅慮もいいところですよ」


持ち上げられた近藤さんは、素直に照れて頬をかく。


そんな様子を見た僕と土方さんは、たぶん同じ様に顔をしかめていたと思う。




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