紅の花舞
□十六、狂気の欠片
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皆が寝静まった夜中。
何となく眠れない私は、縁側でぼんやりと月を眺めていた。
「水でも飲んでこようかな…」
そう思い、勝手場へと向かう。
夜を迎えた八木邸は静まり返っていた。
「……ん?」
今、誰かが広間に入って行ったような…。
(こんな真夜中なのに…)
なんだか妙に、広間の気配が気になった。
こっそり広間をのぞき込むと、そこには――
山南さんの姿があった。
…でも、どうしてだろう。
なんだか、変な胸騒ぎがする。
声をかけるべきなのか、ためらう私を山南さんが振り返る。