紅の花舞

□十八、花簪に揺れて
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西本願寺に屯所が移転してはや三ヶ月。



新しい屯所にもだいぶ慣れてきて、巡察への道も迷わなくなった。



「今日も賑やかだね、総兄」

巡察しながら京の町を眺める。


「そうだね…って、あれ?」


総兄の視線が一点で止まる。


見ると、通りの向こうから平助が手を振っていた。


隣には八番組の巡察に同行していた千鶴もいる。



「お、総司、奏樹ー!
そっちはどうだった?」


「別に何も。普段通りだね」


総兄がくすりと微笑んだ。

「でも、将軍上洛の時には忙しくなるんじゃないかな」

「そうだね。近藤さんも張り切ってるし」



将軍が訪れれば、京の警備をする新選組は、自然と目に留まることになるだろう。


近藤さんが張り切る姿を思い出して、私は頬を緩ませた。


「あー、うん、近藤さんはそうだろうな…」



平助が気の無い相づちを打ったきり沈黙する。


どうしたのかな、いつもの平助らしくない。



私が首を傾げていると、


「……けほっ…こほ」


「総兄、大丈夫?」



彼は苦しげに顔をしかめ、小さな咳を繰り返していた。


総兄はこちらに目を向けたけれど、視線はそのまま私を飛び越す。


不意にその眼光が鋭くなった。



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