紅の花舞

□十九、濃紺の空に
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広々とした広間に、朗々たる近藤さんの声が響き渡る。


「皆も、徳川第十四代将軍・徳川家茂公が、上洛されるという話は聞き及んでいると思う。
その上洛に伴い公が二条城に入られるまで、新選組総力をもって警護の任に当たるべし…、との要請を受けた!」


事態を理解した隊士たちが歓声を上げる。


「ふん…池田屋や禁門の変の件を見て、さすがのお偉方も、俺らの働きを認めざるを得なかったんだろうよ」


「警護中は文字通りの意味で、僕らの刀に国の行く末がかかってる…なんてね」

冗談めかして笑う総兄。



…そんな中、ぽつり、と伊東さんが呟いた。


「上洛の警護とはまた。もしも山南さんが生きていれば…。本当に惜しい人を亡くしましたねぇ…」



…伊東さんは山南さんが死んだと思っている。



ううん、というよりも、あの薬の一件は徹底的に隠されているから、山南さんの生存を知るのはごく一部の人だけだ。




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