紅の花舞
□二十二、友達できました
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その日、私はこの間休んだ分の埋め合わせで、一ちゃんの三番組と巡察に出ていた。
「だいぶ暑くなってきたね」
千鶴が汗を拭いながら、声をかけてくる。
京の町は好きだけど、この蒸すような暑さは苦手。
「氷食べたい!蜜かけた奴!」
「…そうだな」
私がそう言うと、一ちゃんがふっと笑う。
けど、穏やかな態度の端々に、ぴりぴりとした殺気がにじんでいる。
禁門の変以降、長州藩は朝敵として京を追われる身となったけど…。
残党がまだこの京に潜伏していないとも限らない。
京の治安を守る為、片時も気が抜けないのだ。
「とりあえず、あそこの店から回ってみる」
「千鶴はここで待っててね!」
「はい」
千鶴が頷くのを確認して、私達は近くにある呉服屋へと入っていく。
「新選組だ。店を改めさせてもらう」
「へ、へえっ」