紅の花舞
□二十五、朧月をそばに
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その日の夜――。
夜になってからも、昼間の巡察での出来事を思い出して、私はなかなか眠る気になれなかった。
総兄の病状はどんどん悪くなっている気がする。
今日は咳も治まってくれたけど、次は私は役に立てないかもしれない。
「何かできないかな…」
そんなことを考えていた時。
「!?」
廊下から激しい音がした。
(今の…千鶴の部屋の方から!?)
「誰か――、助けてくださいっ!」
続いて聞こえた救いを求める声。
私は空舞桜を掴んで部屋を出た。