紅の花舞
□二十七、まだ見ぬ想い
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伊東さん達は、御陵衛士として新選組から離隊した。
彼らが出て行ってしまうと、屯所は急にがらんとして見えた。
以前に比べ、だいぶ静かになった屯所にも慣れてきたある日の夜――。
「奏樹か。
ちょうどいいところに来た」
自室へ向かうべく廊下を歩いていると、歳兄に声をかけられた。
「悪いんだが、あいつを広間まで連れてきてくれ」
「あいつって、千鶴?」
「ああ。あいつに客が来ている」
千鶴にお客さんなんて始めてだ。
一体誰だろうと思いながら、私は彼女の部屋へと向かった。