紅の花舞

□三十一、触れる手と熱い鼓動
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夜。


総兄が一人、空を見上げていた。


一瞬その背中に声をかけるのをためらいそうになるけど、私は一歩を踏み出した。


「総ー兄っ」


「…ああ、奏樹ちゃん。今日はずいぶん夜更かしなんだね?」


「えへへ、総兄が起きるの待ってたんだ」



私は手にしたお盆を彼に見せる。


「はい、桜屋のお団子!今日、非番だったから買ってきたの」


私がお皿を差し出すと、総兄は目を丸くした。


「まさか、これを僕に渡すためにこんな時間まで起きてたの?」


総兄の問いかけに、私は微笑むだけで答えなかった。


羅刹となった彼が心配だったことももちろんある。



…だけど一番の理由は、私が総兄のそばにいたかったから。



「…まったく、君って子は」


総兄はそう言って、優しく微笑んだ。




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