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□Valentine's Day Kiss!
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2月14日、バレンタインデー。
甘いチョコレートに愛を込めて、想い人に渡す日。
きっと今日というこの日に一生懸命な想いを伝える女の子もいるのだろう。

……既に彼氏がいる人は安心?
ううん、実はそうでもなかったりする。

もちろんチョコは作った。
自分で言うのもバッチリな出来!
待ち合わせの時間も場所も決めた。
きっとドロッチェもわかっているだろう。
あとは、ボクの気持ちの問題。


「……よし!」


気合いを入れてから外に出ると、冷たい風が頬を刺してきた。
呼び出しておいて待たせるわけにいかないから、まだちょっと早いけど小走りで待ち合わせ場所に向かう。


「ぽよっ……!?」


待ち合わせ場所にはもうドロッチェがいた。
……大勢の女の子に取り囲まれながら。


「ドロッチェ様!叶わないとはわかっています!
でもせめてこれを受け取ってください!」

「付き合ってなんて言いません!
でもこれだけでも……!」


たくさんの女の子が、手に持った可愛らしい箱を渡そうと詰め寄っている。
多少は予想も覚悟もしていたけど、これは予想以上だった。
チクリと痛みが胸を刺す。

たしかにドロッチェは恋人の贔屓目抜きにしてもカッコいいし、表向きは紳士的だし……。
ちょっとキザなところも女の子は好きそう。
とはいっても、ここまでモテるとは思わなかった。

ドロッチェは迷っているみたいだった。
彼の性格上無下にできなくて受け取りそうだと思っていたから、迷ってくれているだけまだマシなのかな……?

わあ、あの子の包装すごく気合入ってる。
あ、あの子「て、手作りは駄目ですか?」って聞いてる……度胸あるなぁ。

あっ、あの子の袋、見覚えあると思ったら某高級チョコレート店の奴だ。
あそこのチョコ、前にデデデのやつをつまみ食いしたんだけど、すっごく美味しかったんだよね……。

きっとあの中にも、ボクが作ったものなんかよりもずーっと美味しいものが入っているんだろうなあ。
むしろボクが食べたいくらい……じゃなくて!

ボクと会う前の過去はともかく、今のドロッチェはボクだけを好きだと言ってくれる。
だからそれを信じて、ドロッチェが誰か他の女の子のチョコを受け取っても我慢しようと思ってた。
覚悟はしているつもりだった。

それでもやっぱりこんなの見たくないよ。
いざこうして目の当たりにすると、冷たい風が身体の中に入り込んできたよう気持ちになってしまう。
「受け取らないで」って言うのもなんか心が狭いって思われちゃいそうだし。
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