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□伝わる想い
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「とりあえず、一度一緒に作ってみましょうか。
グリルにはその方が早いでしょう。
何か作りたいものはありますか?」

「まだ具体的には決めてないけど、強いて言うなら大人っぽいのかな……。
そりゃカップに溶かしたチョコ流すとかトリュフとかはボクちんにも作れるよ?
でも、そういうのじゃなくて……」


「それでも十分可愛らしいし彼は喜ぶだろうに」とは思うものの、背伸びしたい彼女の気持ちも理解できる。
だからこそ今回は、彼女の気持ちを汲むことにした。
簡単だが手が込んでいるように見えるもの――。


「なら、ブラウニーはどうでしょう?
洋酒を少し入れればグッと大人っぽくなりますよ」


洋酒入りのお菓子は彼も好きだったはずだ。
そう思い出しながら彼が言えば、グリルの目がぱぁっと輝いた。


「うん!それがいい!
……でも、ボクちんにも作れるかなぁ?」

「グリルなら楽勝ですよ。
ええと、材料は薄力粉にココアパウダーに……」


レシピは頭に入っているのだろう、何も見ずに材料を次々に並べていくランプキン。
……が、洋酒を手に取ろうとしたところで彼の手が止まった。


「洋酒は……無難なラム?
……いや待てグランマルニエも捨てがたいな。
でもやっぱりブランデーの方が……ううん迷うなぁ」


うーん、と考え込み始めるランプキン。
その表情はひどく真剣で、グリルそっちのけになっている。
最早目的と手段が入れ替わっているらしい。


「ラ、ランプキン……?」

「あ、すみません、つい。
どれかご希望とかありますか?」

「えええ……じゃあブランデーかなぁ?
よく聞くし……」


何となくでブランデーを選ぶ。
ようやく材料が揃ったところで、早速作業に取りかかった。
ランプキンが作るのを見ながら、グリルも同じように作ってみる。
その光景は少し年の離れた兄妹にも見える。

普段から家やランプキンの手伝いをしているだけあって、年の割に手付きは安定している。
飲み込みも早いし、この分なら心配は要らなそうだ……と彼は安堵した。
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