短編
□甘いのはチョコか、それとも……
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今日は2月14日、バレンタインデーだ。
カービィは毎年私のためにチョコレートを作ってくれる。
長の職権乱用により、いつもより幾分早めに訓練を終えた私は彼女を探して城の廊下を歩いていた。
彼女はどこにいるのだろう?
自ら貰いに行くのは少々子どもっぽい気もするが……そんなことがどうでもよくなる程度には、早く会いたくて仕方がない。
今年は何を作ってくれたのだろうか。
あの子が一生懸命料理をしている姿を想像するだけで、心にじわりと温かいものが広がっていく。
それが顔か声にでも出ていたのだろうか、すれ違うワドルディがギョッとした顔をしていた。
「めーた?」
どこからか彼女の声がした。
辺りを見渡すと、視界の端に桃色を捉えた。
毛先が柱の影からチラッと見えている。
思わず笑みが漏れそうになるが、ここは我慢我慢。
「おや?どこに隠れている?
出ておいで」
彼女がいる柱にわざと背を向けてそう問えば、少しずつにじり寄ってくる気配を感じた。
何をしようと考えているのかくらい、すぐにわかる。
が、ここはあえて乗ってあげよう。
「こっちだよ!」
勢いよく後ろから飛びついてきた。
予測はしていたがなかなか激しいタックルで、思わずバランスを崩しそうになる……が、そこは男の意地で耐えた。
当の本人は悪びれもせず「えへへー」とご機嫌だ。
……可愛いから許してしまう辺り、自分でも相当惚れ込んでいると自覚する瞬間だ。
「今日もお仕事お疲れ様!」
「ああ、ありがとう。
それで、そなたはこんなところで何をしているんだ?」
「もう、わかってるくせに!」
向き合ってからわざとらしく問えば、恥じらいながら私の胸に顔を埋める。
ほんのりと顔を染めて上目遣い。
それは反則だ、いくらなんでも可愛いが過ぎる。
思わず頬が緩みそうになってしまった――いや、緩んでいない自信がない。
しかし折角(?)だから、もう少しいじめてみようか。
「ほう……なんのことやら?
私には皆目見当がつかないな」
「メタの意地悪!
えっとね、今日はメタに渡したいものがあるんだ。
はい!ハッピーバレンタイン!」
「ありがとう。
ふふ、今年も作ってくれたんだな?」
ピンク色の包装紙と金色のリボンで飾られた箱を受け取りながらそう聞けば、コクリと頷く。
……が、珍しいことに自信がなさそうだ。