○●散財が好き●○

つらつら。たらたら。
どろりどろり。独り言。
◆○●正義の人●○(先輩と右近) 

「分からないんです」
無駄に純粋ぶるカマトトな男は、小さく言うのだった。
「何が?」
一応聞き返してやる俺は、至極優しい人間だと思った。
「分からないんですよ。何が正義か。先輩は分かります?」
「うわー、うぜー」
戦国時代は裏切り欺きの繰り返しだと分かっているのに、こんなことを言ってくる男は、やっぱり無駄に純粋ぶったカマトトだと思ったから、俺の正直な感想を返してやった。正義とか、超うぜー。
「だって村重さんについたら簡単に捕まって、村重さんを見捨てることになっちゃって、こうして村重さんの周りの人をみんな殺した信長の仲間に、僕らなってるじゃないですか。何が正義なんですかね」
切りそろえた前髪をさらりと揺らして、まだカマトトは訊いてきた。だからうぜーっつーの。
「俺は取り敢えず自分がちゃんと生き残れりゃいいかなーって」
そう思いながらもちゃんと答えてやる俺は、やっぱり優しい人間だった。
「先輩、」
「だってさぁ、死んだら正義もなんもねぇじゃん」
溜め息混じりの俺の言葉に、男はそっと口を噤んだ。節目がちなその顔は、胡乱な視線で見ると、長めの両サイドの髪によって影になっていてよく見えなかった。
こいつはこうやって純粋ぶるから、その探している「正義」のせいで、きっといつか酷い目に遭うんだろーな。それがいつか分かんねぇけど。いつか、絶対。なんかそんな、予感はしている。
正義なんか全然考えねぇ俺だけど。でも正義ばっか追い求める頭の悪いこいつを取り敢えず今生かすことが、残念ながら多分俺の、正義だった。

2014/12/29(Mon) 01:17

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