小説ー最遊記

□余所見
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悟空の一日は、いつもバタバタしている。

何処に行くか知らないが、決まって汚れて帰って来る。
初めて寺院に来た頃よりに比べれば、良い事だろ。
元々、人見知りが無い為、心配は無い。
「三蔵ー。そんでさー」
しかし、毎日イライラする。

今日の出来事を聞く。
今日は、こんな事があった。
何か見つけた。
人がどうだった。
町がーー……
と、とにかく話題が絶えない。

吸っていた煙草が、短くなる。
新しい煙草を出すか。

イライラする。

「後、この前のーー」
火がつかない。
カッチ…カッチ…とライターが鳴る。
石が悪いのか、油が無いのか。
同じだなぁ……。

「三蔵」

じっと見てくる瞳。
太陽のように、キラキラと光る。
珍しい金晴眼。

災い・不吉の象徴。

本当にそうか?
問いたくなる。

“金色”と言うだけなら、三蔵の髪も金色だ。
同じ“金色”なのに、異なる輝きを放つ。

「なんだ」
「うーん。やっぱさ」
えへへへと笑う。
照れた笑い声。

悟空は天然の癖に、人がさらりと言えない科白を口にする。
時には、強烈な口説き文句もある。
本人は自覚していない為、何も思わない。

「早く言え」
冷たく言って促す。

こいつと付き合うとろくな事がねぇな。
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