創作部屋

□アンクレット
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「なんか、森山がさ「それって「黄瀬のものです」って感じがするって言うんだ」

「・・・そうなんっスか・・・」

「俺が「ゴールドだからだろう」って言ったら、「それもあるんだけど、なんか違うんだよね」って」

「違うってどういう意味って?」

「「まるで、黄瀬が笠松専用の首輪をつけているみたいだ」って。唯の足輪なのに」

「アンクレットって言うっスよ、先輩」

「足輪だろう?」

「・・・先輩がそれで良いなら、良いッスよ」

「?」

「先輩って俺の事を性質が悪いって言いますけど、先輩の方が性質悪いっスよね」

「はぁ!?どこがだよ!!」


「森山先輩が気づいている時点で性質が悪いんですけど」とは言えず、先輩に「先輩の馬鹿」と悪態をつく事しか出来なかった。
先輩は「誰が馬鹿なんだよ、誰が」と言い、俺の頭を小突くと顔を反らしてしまった。
小突かれた事に「痛いっス」と反論すると、「知らない」と先輩は言い返してきた。
俺自身まさか、森山先輩に気づかれるとは思ってもいなかったら驚いている。
元々、森山先輩は目聡い人だから気づく可能性は高いのは仕方ない事なのかもしれない。
森山先輩が気づいたとなると、もしかしたら小堀先輩も勘づいていそうだ。
この人たちは先輩の事になると人が変わるから、俺でも太刀打ちが出来ない事が多い。(とくに小堀先輩)


「先輩」

「・・・んだよ」

「俺から離れないでね、俺の傍にいてね」

「どうしたんだよ、急に」

「なんか、言いたくなった。先輩がいない世界なんて考えられないの」

「はぁ?」

「先輩だけがいれば、俺は良いの」


その為にアンクレットをプレゼントしたのだから、俺が先輩を繋ぎとめる為に用意した鎖だ。
こんなにも心の底からほしいと思った人は、後にも先にも先輩だけと俺は確信している。
縋るように先輩を抱き締めて「幸さん」と名前を呼んで、少しでも俺の気持ちが伝われば良いのに。
俺と先輩が一つになればしまえば良いのに、どんなに願っても一つなれない事は分っているけど願わずにはいられない。



「涼太」

「ん」

「涼太」

「何?」

「涼太」

「何、幸さん」

「俺の声が聞こえる?」

「聞こえているよ」

「なら、平気だろう」

「なんで?」

「俺の声が聞こえているから。俺の声が聞こえる場所に必ず涼太はいる。だから、こんなもんで縛る必要ないんだよ」

「・・・知っているっスか、アンクレットの意味」

「知らなかったら、つけていない。・・・俺も自分の気持ちを口に出さないから、涼太が不安になっているんだろうって。だから、こんなものを俺に寄こしたのかって思った」



まさか先輩にバレテいたなんて思ってもいなかった、隠していた俺って馬鹿みたいじゃん。
でも、分っていてアンクレットをつけているって事は、自惚れて良いのかな。
分っていて外さないのは、先輩も少ないとも俺と同じように一緒いたいって意味だよね。
俺、馬鹿ばから都合が良い意味で解釈しちゃうよ。



「ねぇ、幸さん。幸さんは俺のものなの。誰のものでもない、俺のもの」

「・・・たまにも思うんだけど、お前って結構重いよな」

「そうっスか?」

「・・・無自覚かよ。・・・じゃ、涼太は俺のものなのかよ」

「とっくに俺は「笠松幸男」のものっスよ」


そう言って俺は先輩とキスをして、「俺だけのご主人様」って冗談で言うと先輩は「お前のご主人様になった覚えはない」と言い返された。


「おれもとっくに「黄瀬涼太」のものだよ」


真っ赤な顔をして、小さな声で言う先輩が愛おしくってまたキスをする。
「嬉しい」と感謝の言葉を口にして、先輩に向かって微笑む。
俺と目線が合った先輩は「あ、そう」と言い、「これからはもう少し、口に出して言うから」と言ってくれた。


「うん、ありがとう」

「おう」



やっぱり、先輩が好きだなって思った。
先輩を繋ぐ為に用意いした鎖で、俺も先輩のことを繋ぎとめてほしい。
繋ぐ鎖をつけて、俺は先輩とどこまでも一緒に歩いていたい。


「今度は幸さんに指輪をプレゼントするっス」

「だから、それが重いんだよ!!ってか、俺の指のサイズを知っているのかよ」

「計測済みっス!!そのアンクレットも計測して買ったんで」

「・・・」

「幸さん?」

「・・・。今から警察に行って、ストーカーの被害届けを出してくる」

「ストーカーされていたんっスか!!誰っスか、俺の幸さんにストーカーした男は!!幸さん、怖い思いしたでしょう?もうそんな事がないようね、俺と一緒に生活しましょう!!」

「うん、お前ね。ストーカーの黄瀬涼太君」

「え?」







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