小説ー最遊記

□花陽炎
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御苦労であったなナタク太子。此度もまた,見事な働きぶりだったと聞く」
 名ばかりの天帝は,建て前だけの言葉を述べる。
 それを答えるのは,まるで自分がやったかのような口調で言う父と呼ぶ人。
 「....は。もったいないお言葉,畏れ入ります」
 ――――あんたは何もしてねぇだろうが。
 俺を武器としか.そんなぐらいにしか見てねぇあんたが。
 「うむ。下がってよいぞ,ゆっくり休むがいい」
 「....御意....」
 何にゆっくりと休む?
 どうせまた殺しに行かせるクセに。
 顔を上げて,チラリと天帝の顔を見た。
 大人と言うのは...どうしてこうまで醜いものだろう。
 自分たちの利益ぐらいしか何も考えてなくて。
 部屋を出て行こうとしたら,聞き慣れた声がナタクを呼び止めた。
 「―――――ナタク!!」
 一体誰だ?
 ここで,ナタクをこんな風に呼べるのはいない。
 「ナタク。こっちこっち!!」
 ひょいと出て来たのは,「友達」と言える子供が手を振いた。
 うれしそうな笑みを見せ,大きな声で言った。
 「おっかえり――――!!」
 「!! お前....」
近寄ろうとしたら,ぐいっと力強く抑えられた。
「――――! 父上...?」
何故,父がこんな事をしたのかわからなかった。
ナタクは少し怯えたような表情で見た。
絶対に逆らえない人が,鼻で笑ってからこう告げた。
「――――あの子供。下界で生まれた「異端の幼児」だな?」
「....」
 李塔天は口端を上げ,何やらおもしろい事でも浮かんだのかような,企んでいる笑みを見せた。
困惑しているナタクをよそに李塔天は,残酷な一言を
「「殺せ」」
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