小説ー最遊記
□花陽炎
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長すぎた 君の言う日々は一夜の夢のようで
終わる言葉信じられない 目覚めの時はまだ遠い
千の夜を消せないでまだここを立てない
君の優しい言葉だけせめて覚えておきたかった.....
お前と一緒に居られた時間は,ほんの僅かだった。
けれど,俺は自然な....ありのままの俺で居られたし,見せられた。
安心できた場所はお前と一緒に居られる所なら,どこにでもそうなれた。
桜の木で,あの子供は自分の名前をナタクに教えた。
忘れられない。
たぶん――― 一生..。
「俺の名さ,悟空ってんだ」
金蝉童子が付けたのだろう。
悟空はとてもうれしそうな顔をしていた。
ナタクの心中はかなり複雑だった。
ナタクの知っている金蝉童子と,悟空の知っている金蝉童子があまりにも違いすぎるからだ。
だから,ナタクは悟空の口から金蝉童子の名前を聞くのが嫌だった。
ナタクの知っている金蝉童子と言う人物は,何事にも動じない。
生まれながらにして,釈迦の弟子となる素質のある者だから。
こんな時だけでいいから....。
どうして桜は散らずにいられるのだろう。
こう考えてしまうのは,やはり己が愚かさからなのか。