創作部屋

□時を越えた手紙 
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「よし!!じゃ,二十歳になったら,また此処に来て掘り出そうね?」
「ったく,お前ってやっぱり餓鬼だよな」

「餓鬼って当たり前じゃん。私たちまだ十二歳だよ?」

「だーかーらー」

「ハイハイ。約束だよ,二十歳になったらまた此処に」










八年後――――










俺は多分その頃から。
こいつの事が好きでしょうがなかった。
幼なじみで,手のかかる妹みたいで(実際,俺はこいつより三ヶ月早く産まれている)。





でも,何処か惹かれていて。
うまく言えないけど,どんどんこいつの事が好きになった。





八年前の今日。
俺たちは,タイムカプセルってやつをやった。
餓鬼がよくするやつだから,もちろん中身は定番。
当時の大好きな玩具や宝がある。
俺たちは定番中の定番。
お互いに手紙を書いた。




「こら,手を休めない」

「なんだよ!!人に押し付けといて,よく言うぜ」

「「俺が掘ってやる」って言ったのは何処のどいつよ」

「......俺が,そんな事言ったか?」

「言いましたよー。私,ちゃんとこの耳で聞いたもーん」

「二十歳になっても,そのしゃべり方どうなんだよ」

折角,人が思い出していた所を。
休めていた手を動かす。
餓鬼の癖に深く掘ったなぁ....と他人事のように思い乍。
カチッと,何かが当たる音がして,慎重になる。
土を払うとそこには,手紙が入っている筈のカンが出てくる。
「ほらよ」と言って渡す。
「投げないで,大切にしてよね」と文句を言ってくるが,俺は「そうですかー」と流す。
「本当に,昔からそうなんだから」俺の後ろでまたぶつぶつ文句を言ってくる。




そういや....。
俺はなんて書いたんだ?
思い出すのは埋める時の事で,それまでの課程がぽっかりとない。
そう言えば,レターセットなんか持ってないから,姉貴から貰って.......。
もうすぐ桜が咲く頃だったような気がする。
ヤベ....,マジでなんて書いたんだ。






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