創作部屋

□価値 
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人間を物質として考えると
脂肪は石鹸 七個分
炭素は鉛筆の芯 九千本分
鉄分が二寸釘 一本分
リンがマッチの頭 二千二百本分







「―――――人間なんて,たった五千円しかないんだよ」







人間だった肉塊を見て呟く。
そんな君を僕は唯,じっと見ていた。
君は少し困った笑みを浮べる。















夢か.....。
変な夢を見た。
僕が所属している組織と言う名の監獄で生かされている。
僕と同じように組織にいる連中は,人を壊す方法を教えられた。
物心がついた時から,赤色の世界しか知らない。
それでも僕は“人間らしく”生きた。
時には笑って。
時には泣いて,怒って,悩んで。
“人間らしく”なれて。
けれど,君は―――








「テメェの事なんかよりも.「仕事」が大切なんだ」






そう言った。
つまらない権力者達に踊らされて。






「疲れたんだ.....。夢の中ぐらい,笑っていたいのに」









「笑って」
そう僕に告げたあの日。
その笑みがあまりにも儚くて,切なくて。
心の何処かで気づいていた。





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