小説ー戦国BASARA

□懸け橋
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「私は懸け橋となりたいのです。苦しみも哀しみも全てを受け入れて、新しい時代へのーー……」





そう言った彼の人は、最後まで武士らしかった。












ー懸け橋ー










一六一五年 五月七日。
豊臣対徳川の戦は終盤に差し掛かっている。
豊臣の総大将は豊臣秀吉の嫡子、豊臣秀頼と言うより軍師の真田幸村と言っても過言ではない。
実際幸村の策で、何度西軍は助けられたことか。
幸村は西軍の中では異質だ。
幸村以外の真田家は敵対している東軍に従っている。
豊臣に恩があると言っても高が知れているではないか。
では、何故幸村は西軍の味方をしているのだろう。















「確かにそう言われてみると、不思議ですね」





穏やかに笑って返事を返す。
そう言えば、幸村はいつも笑っている。
笑っている顔以外、今まで見た事がない。















「もしかしたら、皆が言うように理想主義者なのかもしれません。夢ばかり追いかけていると」


そんな事ないです。
少なくとも私はそうは思いません。





ふふふ…と幸村は笑った。
「優しい方なんですね」と面と向かって言われた。
今まで「優しい方」と言われた事がなかったから、苦笑いをしてその場を誤魔化した。
本当にこの人には驚かされる事が多い。















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