小説ー戦国BASARA

□巡る想い
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最後に見た顔はとても穏やかだった。
どうしてそんな顔をしている?
お前の夢は此所で終わるんだぜ?
とか言おうと思っていたのに
その顔を見たら…………










「お前らしいな、幸村」










それしか言えなかった
あれから何十年過ぎた
俺は今でも欠落を抱き乍生きているーー……










ー巡る想いー


















「藤次郎様」
「よぉ」



幸村の墓参りに行く途中、阿梅と大八に出会った。
阿梅は年を重ねるにつれて、幸村と酷似してくる。
よく娘の顔は父親に似ると聞くが、まさにその通りだと感心してしまう。



大八は母親に似たのか猫毛ではなく、真っ直ぐな髪質だ。
見た目は全くと言っていい程似ていなくとも、幸村と思ってしまう程性格だけは恐ろしいぐらいに似ていた。





やっぱり親子だと思う。









「藤次郎様はこれからですか?」
「まぁな」
「藤次郎様!!帰ったら、僕に稽古をつけて下され!!」
「こら、大八」
「良いぜ。でも重綱には内緒だからな」
「わぁい!!」



大八の頭を撫でて、阿梅の顔を見ると苦笑いしていた。
重綱の嫁と大八の姉としての立場で、板挟み状況なものだから、どう言って言いのか分からず苦笑いをしているのだと、政宗には気がついた。



幸村と同じ顔だ。
一国一城の主として碌に仕事をしないで幸村に「手合わせしないか?」と誘う時、よく幸村が見せていた表情。



その後、しばらく阿梅と大八と他愛もない話をして別れた。
どうせ城に戻ればまた話をするだろう。










今はそれよりも
幸村の所に行きたかった。













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