星の降る街

□白いリンゴの木の下に
1ページ/16ページ

 列車がその駅に着いた時、もう辺りは暗かった。

既に9月も半ば過ぎ。

夏の日照時間が長かったころが懐かしい。

まだ、携帯を見ると時刻は6時過ぎだった。

真夏だったらこの時間は明るかったはずだ。

もっと早く帰ればよかったかな・・・。

ホームに降り立って私はちょっと後悔していた。

もうバスもない。仕方ない、ノスタルジアに浸りながら歩くか。

ボストンバッグを持ち直して懐かしい道を歩き出す。

あの頃から村も少しは進歩したようで、ところどころに街灯があった。

10年ぶりの故郷。家を出てからもう10年も経ったんだ。

あれから結局一度も帰っていなかった。

母は毎月のように、電話をしてきては「一度帰っておいで」と言ったものだ。

その言葉を無視し続けて、母が亡くなった時も私は帰らなかった・・・。

まあ、あの時は帰るに帰れなかったのだけど。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ