星の降る街
□白いリンゴの木の下に
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列車がその駅に着いた時、もう辺りは暗かった。
既に9月も半ば過ぎ。
夏の日照時間が長かったころが懐かしい。
まだ、携帯を見ると時刻は6時過ぎだった。
真夏だったらこの時間は明るかったはずだ。
もっと早く帰ればよかったかな・・・。
ホームに降り立って私はちょっと後悔していた。
もうバスもない。仕方ない、ノスタルジアに浸りながら歩くか。
ボストンバッグを持ち直して懐かしい道を歩き出す。
あの頃から村も少しは進歩したようで、ところどころに街灯があった。
10年ぶりの故郷。家を出てからもう10年も経ったんだ。
あれから結局一度も帰っていなかった。
母は毎月のように、電話をしてきては「一度帰っておいで」と言ったものだ。
その言葉を無視し続けて、母が亡くなった時も私は帰らなかった・・・。
まあ、あの時は帰るに帰れなかったのだけど。