星の降る街

□パパの秘密
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「ねえねえ、今日のヒットアワー、観る?」

「観る、観る!だって、AtoZ出るんでしょ?」

「生放送なんだってよ〜」

「新曲でしょ?すっごい楽しみ!!」

休み時間の教室は、騒がしい。

あちこちできゃあきゃあ、声が上がって、男子がまるで違う生き物を見るような目で、女子を見ている。

好きな本を読んでても、頭になんて入らない。・・・ダメだ!・・・

私は、本を閉じちゃった。

そこに、親友の美佳が来る。

「ねえ、茉那。今日、帰りにCDショップ付き合ってよ。」

「CDショップ?」

「そ!AtoZの新曲、今日発売なんだよ。」

・・・うん、知ってる。言われなくたって知ってるよ・・・。

なんたって、我が家にはそのCD、既にあるんだもん。

「・・・いいよ。」

「ありがと!茉那は、買わないの?」

「私・・?う〜ん、金欠だからね・・・。」

私はいつもこうやってごまかす。なんだって、家にあるのにわざわざ買わなくちゃいけないのだ・・・。

「そっか、じゃ、またダビングしてあげるね。」

「ありがと。」

美佳は、机の上の本に目をやって

「また新しい本買ったの?本買うから、CD買うお金なくなっちゃうんだねえ。」

と、その本をめくった。

「茉那だってAtoZ、好きなんでしょう?」

「う・・・ん・・。」

そりゃ、嫌いとは・・・言えない。言えるわけないじゃない。

私は、本が好きだ。もう、一日中読んでても飽きない。

でも、これ買ったからCDが買えないわけじゃないんだよ。

親友なのに、黙っててごめんね・・・。私はちょっと心の中で詫びてみる。

でもこれはいくら大親友でも言えやしない。

美佳にごめんねって呟くたびにいつも心がチクっと傷むんだ。
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