Lovers
□プロローグ
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もともと荷物があまりない少女は簡単にまとめると、古代種であるミルス・クレア魔法学院の先生を待つ。
『なんと!この娘は全属性か』
『古代種以外の全属性は人類初だぞ』
『これは非常に貴重な実験体になるな』
黒の塔に来た時から少女は常に好奇の眼で見られていた。
“人類初の全属性”
それがどんなに珍しいものなのか、幼い少女は知るはずもないし、知る由もなかった。
ただ毎日、鎖に繋がれ、魔方陣に立たされ、魔法を受け。
時には刻印を身体に刻まれたりもした。
けれど、どんなに痛い思いをしても、成果がなかったら落胆のため息の嵐。
幼い少女には耐え難い日々だった。
―――コンッコンッ
ノックの音で我に返る。
自由になれることへの解放感のせいか、少々気が緩んでしまい、昔のことを思い出してしまったようだ。
うっすら浮かぶ涙を拭い、「どうぞ」と返事をする。
先刻、科学者たちが入ってきたように錆びれた金属音をたてながら、扉が重々しく開く。
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