Lovers

□プロローグ
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入ってきたのは小さな子供と美しい女の人だった。



見た目はともかく、服装や装飾品から見て、この人たちがミルス・クレアの先生なのだろう。





「陰気な場所じゃのぅ。
居るだけで気分が悪くなるわい」





小さな子供の先生は外見に似合わず口調がなんだか老人くさい。





「あら、愚兄と意見が合うなんて珍しいこともございますのね。
私もこんなところには一秒も長く居たくありませんわ」





女の人は高飛車な貴婦人のような口調で部屋を一瞥すると少し顔を歪める。



“愚兄”という言葉がちょっと引っ掛かったが、少女は取り敢えず深く考えないようにした。



しばらく二人のやり取りを目をパチパチさせながら見ていると、女の人がこっちに歩み寄ってきた。





「こんなところに、いたいけな少女を10年間も監禁するなんて……可哀想に」





綺麗な赤い瞳に一瞬、憂いの色が浮かんだかと思うと次に瞬きをした時には少女は女の人の腕の中。



優しく包み込むような抱擁で時折、背中を赤子を宥めるように擦る。



突然のことに驚きを隠せない少女は女の人に目線だけ向ける。





「これからは外の世界で自由に生きていいんですのよ」





“自由”





次の瞬間、少女の瞳から涙が零れ落ちる。



自分で自分に言い聞かせる言葉にはなかなか説得力がない。



でも、他の人に言われて初めて自分が本当に自由になれたんだと実感することができた。



少女は幼子に戻ったように、ただただ泣き続けた。



その間も女の人は背中を擦り続けて、それが少女にとってとても嬉しかった。





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