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□コーヒーは甘口で(11×07)
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東月と付き合い始めて約半月。
学校が休日である今日は自然と俺の部屋で二人で過ごす事にした。

幸福な時間はあっという間に過ぎていくもので、時計の針が真上に指した所で東月が昼食を作ってくれた。


「宮地君」

昼食を食べ終え、ベッドの柱に背中を預けて本を読んでいた俺に東月が話しかける。

「コーヒーどうぞ」

甘くしてるから安心してね。と笑みを浮かべ、昼食の食器を片付けて戻ってきた東月の両手にはマグカップが握られていた。
食後の一杯か、なんて考えながら気の効く恋人だと思う。
本当に、自慢してやりたいくらいに。

それを頂き、小さな音を鳴らしてマグカップを机に置いて東月を見ると俺をずっと眺めていたようで目が合った。

「む…なんだ?」

「いや…その、ね……」

コーヒーの礼よりも東月の視線が気になった為、俺は読みかけだった本を閉じてベッドの上に置き東月の話を聞く態勢を作る。

暫く口ごもっていた東月も態度を崩さない俺に折れたのか口を開いた。




「…俺のこと、好き?」




時間が止まるというのはこんな時を言うんだと思い知った。


「……は?」


予想もしていなかった思わぬ台詞に俺はつい間抜けな声をあげた。
声同様に顔も間抜け面になっているのか、俺を見つめていた東月の顔が少し険しくなる。

「だから、宮地君は…俺のこと好き?」

さっきと全く同じ問いを更に正確に聞いてきた。
俺の名前を使わなかっただけ前者の方がマシだったかもしれない。

「そっ、それは……」

「嫌いなの?」

しどろもどろする俺の反応に今まで少し吊り上がっていた東月の眉尻が下がり、今度はハの字へと変わった。

「す…、好きに決まっている!!」

東月の悲しそうな顔に慌てて混乱している俺の頭でも、それだけは断じて無い。と叫ぶ勢いで答えた。
一瞬だけ驚きを見せた東月は少し置いて苦笑し、俺を見つめる。

「…俺も宮地君が好き」

瞳を見ればそれが東月の本心であることは簡単にわかる。
向けられる視線が普段よりも甘く、僅かに熱を秘めているのは俺だけのものだ。
頬を血色の良い桃色に染める東月は可愛いとしか言い様がない。


「ずっと見ていたいくらい好き、」


「む…?」


「いつも傍に居たいくらい好き、」


「と、東月…?」


一体どうしたというのか、今日の東月はいつもより甘えたがりだ。
台詞だけなら単なる愛情表現にしか聞こえないが、普段から人に甘える事が少ない東月にとって自分の気持ちを伝えるということこそが稀で、"甘え"なんだと俺は思っている。




「キスしたくなるくらい、好き…」







つまり、言っている事の"逆"こそが東月の欲しいもの―――――。







そんな可愛い姿を、愛らしい事を言う東月に俺もそろそろ限界を迎えそうだった時にまさにトドメの一言。
既に顔は伏せられているが、髪の合間から赤くなっているのが分かる。

俺は東月の傍らまで移動しその体を抱きしめた。
堪らず行動に出た為に少し力が入っていたのか、東月が少し身じろぐが俺は離すつもりはない。
今回ばかりは東月がいけない。



" キスしたくなるくらい、すき "



「宮、地君…」



つまりは、" キスしてほしいくらい、すき "―――



「東月、顔を上げてくれ」


抱きしめた以降もなお下を向いていた東月に呼び掛ける。
すぐにでもキスしたい気持ちを抑えて東月を待つのは、抱きしめた手を離したくないから。

「…うん……」

しばらく時間が経ってから返事が返ってくる。
同時にゆっくりと上に向けられた東月の顔はりんごみたいに真っ赤だった。

よく見れば不安なのか、閉じられた瞼を震わす東月の目尻に優しくキスしてやると安心したのか唇がうっすらと孤を描き、ふふ。とくぐもった笑い声を漏らす。

「んっ…」

俺はそのタイミングを見逃さず東月の唇に自分のものを重ねた。

「はぁ……ふっ…」

開いた唇の隙間に舌を忍ばせ、口内を優しく撫でる。
俺も同じ気持ちだと伝える様に。

やがて東月の手も俺の背中に回されていた。


「宮…地君…、大…好き……」


合間に紡がれた言葉に堪らずもう一度キスをする。


掌や唇から伝わる熱の温度が高くなっていくのに愛しさを感じ、その後も甘え下手な恋人の精一杯の甘えを受け入れた。






――――――――――――――――――
どのくらいが甘々なのか、とか思いながら甘くしようと頑張ってみた11×07。
実際こんな人いたらマジ可愛すぎる、と思います。

タイトルが何故か笑える(笑)





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