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「あーっ!王子様だ!」
2時間目体育。
あの軽いノリの声が体育館いっぱいに響き渡る。
誰しもがその声に一瞬振り返った。当然俺も振り返ったわけで。
どこかでみた…オレンジ頭の妙に背が高いヤツがいた。
俺にめがけてしっかりと指先のベクトルが向いている。
肩から指先までまっすぐ伸ばしたそのままで、勢いよく大幅で歩いてきた。
「し…りあい…?」
近くにいた天神 晃(テンジン アキラ)が指先の示す先をたどって俺の顔をみた。
俺は晃を見返す。そして小刻みに横に首を振る。
なんだか嫌な感じがする。
「ちょっと、王子様!無視しないでよー… あっ、大丈夫だよ、俺は詩織ちゃんをとったりしないからね〜。それよりさ、それよりさ」
はじめから馴れ馴れしく近づいてくるオレンジ頭にどう対応したらいいのかわからず、「はあ」と気の抜けた返事をしながら、手持無沙汰になっている両手を無意味に動かして長袖上着の袖を少々たくしあげる。
「ねね、一緒のチームに入らない?ね、いいでしょ。こっちのクラス男子の数が中途半端でさ、ひとり足りないんだよね。」
2クラス同時に男子・女子に分かれて体育が行われる。
今日、男子は体育館でバスケ、女子は運動場を使用して別の球技をしている。
圧倒されているうちにいつの間にか肩を組まれ、ほぼ強制的に別チームの方へ連行されている。
「王子様って、運動部なんでしょ。こっちにきてもらうとすごく戦力!これで勝ったようなもんだー!」
気づくと俺は晃から引き離されて、隣のクラスの男子チームに組み込まれていた。
周囲に勝利宣言をしてひた楽しそうなオレンジ頭。参った。
流されて、巻かれていくしかないだろう。(あ、五・七・五)
遠くにいる晃とアイコンタクトを悲しそうにする。
ふとその視界にオレンジ色が入ってきた。オレンジ頭が俺の顔を覗き込んだのだ。
「だいじょうぶ?王子様、もうすぐはじまるよ」
突然の男のアップが表れて、後ずさった。
今日は後方に動くことが多い。
「あ、ああ…」
教官が来るまでに、しぶしぶ準備をする。