□前置き
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「早凪村」人口200人にすら満たないような小さな小さなこの漁村が彼、丘蘇芳の住む村であった。

蘇芳は漁業を営む彼の祖父、丘黄丹に18まで育てられた。父母ともに物心ついた時にはすでにいなかったのである。

蘇芳もそれに対してはあまり考えなかったし、幼心に祖父に悪いと感じてたのである。

しかし、蘇芳12歳の春、それが原因・・・といっては語弊があるのだが、人を殺したのである。

同じクラスの、といっても学校の全校児童は14人。一つ上の少年だったのだが。

彼は都会の方からなんらかの家庭の状況できたらしい。都会からこんな錆付いた村にくるからには恐らく相応の事情があると思われるがー蘇芳はどうでもよかったのである。

この杉という少年。両親のいない蘇芳にからかいの言葉を浴びせた。

蘇芳はそれまでからかいの言葉など聞いたこともない。
それは当然この小さな村でそんなクラスの友人を敵に回す様な発言をするのは極めて愚かしいのである。

蘇芳はそれに酷く動揺を受け、彼を突き飛ばした。そして不運というべきか幸運というべきか、杉の頭は固い硬い岩石にぶちあたったのである。

杉は気を失っていたのだが、蘇芳はそのまま家に帰った。祖父と夕食を取っていつもどおりの睡眠に入った。

その夜蘇芳は不思議な夢を見た。紫色の空に浅葱色の草花。何かに酔いしれたような動物が誰かを囲っているのである。

蘇芳はその「誰か」が杉のような気がした。
「杉」と彼が呼ぶと、その誰かはこちらを見た様な気がしたが気のせいかもしれなかった。

蘇芳は早朝 杉の様子を見に行った。違う。杉だったものを見に行った。
そのかつて杉だったものは冷たく硬くなっていた。

数ヶ月前に鼬が家の罠にひっかかって死体を見たが、人間のそれを見たのは初めてだった。

彼の頭からは血が大量に出ていたようだが、
もうすでに乾いてしまっていた。
そうかこの色。


    蘇芳







彼の両親は心配していないのかな、とかふと考えたりもしたのだが、もう何かどうでもよくなってしまった。

さて、前置きは長くなってしまったのだが、
これは8年も前のお話。蘇芳は20歳になり、祖父の訃報を聞きつけ村へ戻る。
そんな狂った青年とおかしな村のお話。●●●●

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