長編 書き場
□興味
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24時間念能力が使えなくなったカメリアはその度に行く場所がある。
「館長ひさしぶり〜」
「ああ、カメリアちゃんか。久しぶりだね。」
天空闘技場の近場にある図書館。
能力が使えなくなった時や、暇になったときには不思議と訪れたくなる場所なのだ。この図書館の館長とは気さくに会話ができる仲で、念能力や記憶喪失であることなど流星街出身であること以外は会話済みである。館長と話しているとなんだか懐かしい気持ちになって和む。
ちなみに、詳しいことは聞いていないが館長も念能力者だそうだ。
「ふむ、今日は念能力を使ったから暇つぶしにきたというところかね?」
「流石は館長!そのとおり!だから今日は雑誌でも見て趣味を探そうかなと」
「図書館ですることじゃないのでは?」
「まぁ気にしないで....」
そう言うとカメリアはフロントから離れ、図書館のほんのひとスペースにしかない雑誌をかき集めてフロアの中央にあるロングテーブルの隅っこの席に積み上げた。
「料理....一緒に食べる人いないしなぁ〜」
「ファッション....面白そうだけど私家ないから収納する場所がない....」
ぶつぶつと独り言をつぶやきながら料理、ファッション、音楽とさまざまなジャンルの雑誌を眺めるがパッとするものが見つからない。
そんな図書館に似つかわしくない光景のカメリアが気になったのか一人の男が声をかけてきた。
「まったく統一されていない雑誌だけど何をしてるの?」
「!」
まさか声をかけられるとは思っていなかったカメリアはびっくりしてその男を見上げる。
するとその男はとても綺麗な顔立ちでさらに驚いた。額に包帯を巻いているが怪我でもしているのだろうか。
「あ、えっと...趣味を探して...雑誌をみてました?」
「趣味を探すのに図書館って君変わってるね」
「えっ!そうですか?まぁたしかに雑誌だけ見るなら図書館じゃなくてもいいですよね」
「いや、今では図書館に雑誌や漫画、CDもあるから本を読むためだけの場所ではないな。うむ、すまなかった」
「えっ?いえ、気にしてませんよ!」
包帯を巻いた男は一人で考えては納得してカメリアの正面に位置する席に座り、手に持っていた本を机に置いて視線を合わせてきた。
「俺はクロロ。君は?」
「カメリアです」
「カメリア。いい名前だね」
「あ、ありがとうございます」
突然の自己紹介で戸惑うカメリアにクロロは微笑む。
「趣味を探していると言っていたが、読書は趣味じゃないのかい?」
「本を読むのは嫌いじゃないですけど、もっとスリルのあるというかドキドキするようなことがほしいなぁって」
「スリル...ハンターみたいなもの?いや、でも君は一般人だし流石にハンターはダメか」
「ハンター...?クロロさんはハンターなんですか?」
「いや、知り合いにハンターがいるんだ」
流星街を出てからというもの特に変わったこともない普通の生活をしていたカメリアにはハンターについて無知だった。ハンターよはスリルがあってドキドキするものなのだろうか?
クロロの視線がスマホに移り、先ほどまでの朗らかな表情が少し真剣な顔つきになった。なにかあったのだろうか。
「クロロさん?どうしたんですか?」
「あ、すまない。仕事仲間から連絡があってね。今から向かわなくちゃいけなくなったんだ」
「そうなんですか...大変ですね」
「あまり話せなくて残念だ。またどこかで」
「はい、お気をつけて」
また先ほどの優しい顔をしてカメリアに小さく手を振り急ぐように図書館を後にした。
クロロの発したハンターという言葉が気になりフロントにいる館長の元へ足を運んだ。
「ねぇ館長」
「ん?どうしたんだい?」
「館長ってハンターだったりする?」
「なんだい、カメリアちゃん。念能力を会得してるのにハンターじゃないのかい?」
「念能力に触れる機会はいくらでもあったけどハンターに触れる機会はなかったのかも...」
館長は手をあごに当てて悩むように言った。
「ハンターはな....」
そう言うとハンターとは怪物・財宝・賞金首・美食・遺跡・幻獣など、稀少な事物を追求することに生涯をかける人々のことを指し、プロのハンターの資格を得るには、数百万分の一の難関と言われるハンター試験を突破しなければならないことを詳しく説明してくれた。
「そ、そんな楽しそうなことがあったなんて....」
「念能力を会得しておいてハンターを知らない人がいることのほうが驚くわい」
「どうしたらそのハンター試験って受けれるの?」
「会場を把握して向かうまでがすでに試験なんだよ」
「えぇっそうなのか...」
あからさまにカメリアが落ち込むと、館長はやれやれというふうに息を吐いて紙になにかを書くと、そのメモを差し出した。
「試験は明日だよ。場所は遠いがカメリアちゃんなら念能力で行けるだろう?」
「なんで館長場所しってるの?」
「案内人をまかされてたんだよ」
「えぇ?!」
恐ろしい偶然にカメリアは雷に打たれたよう大袈裟に驚くと館長はカッカッカと独特な笑いを見せた。
「受験者はほとんど念能力を知らないから能力は基本隠して行動したほうがいいかもしれないね」
「そうなんだ...じゃあ24時間能力使えなくても大丈夫そうだね」
「ああ...がんばってね」
「うん!ありがとう!」
会場の場所が書かれたメモをポケットに入れ、館長に大きく手を振って図書館を後にした。
メモに書かれていた場所は今から飛行船に乗っても間に合わなさそうなので念能力が使えるようになったら"盗み喰い(アビリティハンター)"で転移する能力を使って向かうことにした。
「”空間転移(テレポーテーション)”」
この日を境にカメリアの退屈な日々は徐々に崩れ始めるのであった….