長編 書き場

□不穏
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某定食屋正面。カメリアは館長にもらったメモと定食屋を何度も交互に見る。

「え....会場ってここ....??」

メモの場所は確かに目の前にある定食屋を指していた。

「合言葉も"ステーキ定食、焼き方は弱火でじっくり"ってのを見ると間違いないんだろうけど...」

ここに来るのに"盗み喰い(アビリティハンター)"を使ってしまったのでまた念能力の使えない一般人となってしまったが、受験者のほとんどは使えないと館長が言っていたのであまり緊張感することはないはずなのにドキドキしていた。

「こんなにドキドキしてるのは久しぶりだな...」

胸に手を当て深呼吸をひとつしてカメリアは定食屋の扉をくぐった。
店主に先ほどの合言葉を告げると奥の部屋へと通され、部屋丸ごとがエレベーターになっていて地下100階まで運ばれた。
100階にたどり着くと薄暗い洞窟のような場所に出た。すでに400位の人が集まっており一触即発の雰囲気が漂っていた。

「番号札をお配りしています。どうぞ」
「あ、どうも...」

まめの姿をした案内人さんから番号札を受け取りとりあえず左胸につけた。

「402番...結構受験者っているんだなぁ」

「なんかみんなピリピリしてるね」

後ろから聞こえ振り返ると、後に来たであろう3人組の姿があった。そのうちの一人は自分よりもずっと年下であろう黒髪の少年だった。

「こんな純粋そうな子供でもハンター試験って受けれるんだ....」

なんとなく10代後半から大人が受けるイメージがあったが、周りを見渡せば中年や老人、顔に針が刺さった雰囲気ヤバそうな人まで様々な人たちがいる。

「ウワアアアアアアアアアアアア!!!」
「?!」

突然人ごみの中から叫び声が聞こえ振り返ると屈強な男の両腕が切断された。というよりは消滅していた。

「気をつけようね...人にぶつかったら謝らなくちゃ♣」
「(あの人...絶対念能力者じゃないか...!)」

ピエロのような格好をしたしゃべり方も不気味な人。その禍々しいオーラは今念能力が使えないカメリアでも感じ取ることのできる程だった。

「げ、あいつヒソカじゃねぇか…今年も居るのかよ….」

近くにいた受験者がボソりと愚痴をこぼしたのが聞こえた。不気味な人の名はヒソカというらしい。
その口ぶりから前回のハンター試験にもいたようだが、念が使える受験者であれば合格は間違いないだろうに、不合格だった理由はきっと普通の理由ではないのだろう。

「で、できるだけあの人には関わらないようにしよう...」

あまり目立たないように試験が始まるまで壁側のパイプに座って待つことにした。

ジリリリリリリリリ

目覚ましのような音が響き行き止まりだった壁がゴゴゴゴと上がると試験管らしき人の姿が見えた。

「おまたせしました。これからハンター試験を開始いたします」

そう言うとハンター試験の注意、棄権の確認をすると奥へと歩き始めた。

「申し送れました。私、一次試験試験管のサトツと申します。これから皆様を第二次試験会場まで案内いたします。」

受験者はざわざわとする。どうやらサトツさんについて行くことが一次試験のようだ。ペースが速くなっていきみんな小走りになる。
試験会場がどのくらいの距離なのかもペースがどこまであがるのかも分からない状況は正直不安である。
小細工の一切聞かない単純な体力勝負なのだ。カメリアはただひたすら走った。


走り始めて約6時間、ようやく光が差し込み出口らしきものが見えた。

「俺が早かったよ!」
「いいや!俺だ!」

外に出れたと思ったら最初に見た黒髪の少年ともう一人同い年くらいの銀髪の少年がどっちが先に到着したか言い争っていた。しかも息ひとつ上がっていないように見えた。

「君たち、息ひとつあがってないんだ。凄いね」
「こんなの余裕だよ」
「俺もまだまだ平気だよ」
「そういうお姉さんも全然余裕そうだよね!」
「でもまだゴールじゃないみたいだぜ」

あたりを見渡せば先が全く見えない濃い霧だった。
2次試験会場までまだ先は長そうだ。

「そいつは偽者だ!」
「!」

急に叫び声が聞こえ、振り向くとサトツを指差し、片手にサトツにそっくりの猿を掴んでいる男がボロボロの姿で立っていた。

「俺が本当の試験管でそいつは試験管になりすましているんだ」
「?これも試験内容と関係あr」

突然カメリアの目の前を豪速のトランプが通ったことにより言葉が途切れた。
そのトランプはサトツに向けて飛ばされたものだったが華麗にキャッチされ、叫び声をあげた男のほうを見ると身体に複数のトランプが突き刺さり倒れていた。

「(念を込めたトランプ?!)」
「決まりだね♠本物の試験管はこっち♥」

ヒソカが不適な笑みを浮かべながらトランプカードをスプリングしていた。

「(この人やっぱりヤバい人だ...)」

能力者として...もそうだが性格がきっとヤバい。そう悟った。

「・・・♣」
「!」

今一瞬視線があってしまい咄嗟に目を逸らした。あんなのに目をつけられたらたまったもんじゃない。

無事に2次試験会場にたどり着けますように....
そう願いながらサトツを追って霧の中を走り出した。








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