長編 書き場

□殺人
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「皆様大変おまたせいたしました。目的地に到着です」

アナウンスと共に細長い塔の上に全員降ろされた。
トリックタワーと呼ばれるこの塔が三次試験スタートだそうだ。
試験内容は生きて下まで降りること。制限時間は72時間、つまり三日の間にどうにかして下まで降りて来いということのようだ。

「んーどこかに隠し扉とかあるのかな」

気づけば半数くらいすでにいなくなっている。
外壁を伝って降りようとした者は先ほど巨大な鳥に喰われ不可能と判断した。
そうなればあとは地面を探すしかない。

「あ、ゴン、キルア〜なにかありそう?」

しゃがみこんで地面を見つめるゴンとキルアに近寄ろうと小走りで向かおうとした。

「あ、カメリア!そこ仕掛けが...」
「ゴボォッッッッ!!」

ゴンがすべて言い終わる前に地面にある仕掛けに気づかず踏んでしまい不意をつかれ変な声を出して下へ落ちていった。

「.....落ちたな」
「.....うん..大丈夫かな」






「あいてててて....」

落下したものの高さはそんなになかったおかげで怪我はしなかった。
薄暗い部屋のようで一枚の扉が目の前にある。
どうやらこれから現れる囚人たちを倒して進むルートのようだ。

「今回はバトルがメインになるのか...」

あれから24時間が経過したのを確認して念能力がもどったことを確認する。
そして、もうひとつの念能力"漆黒の凶器(ブラックキラー)"を発動させるのに必要な砂鉄をポシェットに短剣2つ分程詰めたのを確認した。
72時間の制限時間付きの試験内容だ。あまり時間はかけたくないしこんな薄暗い場所はどうも好きじゃない。他の受験生とは別行動ならより好都合、三次試験では念能力を隠さず使おうと思った。

一つ目の扉をくぐると真っ暗な部屋。
ボウッと音と共に壁に巡らされたロウソクに火がともって視界が開けた。
そこには両手を手錠で繋がれたフードを被った大男の姿が。

「お前の試験内容は1対1のデスマッチバトル。勝てば次の扉を進めるシステムだ」
「で、ですまっち?」
「ああ、殺し合いだ」
「殺し合い?!」

まさかの殺し合いのバトルにカメリアは怖気づく。念能力は使えると言っても今まで人を殺したことがなかったからだ。

「気絶や降参でもダメ?」
「気絶では次の扉は開かないようになっている。降参は相手によるな。ちなみに俺は降参なしだ」
「そ、そんな...」
「武器は自由。それでは行くぞ」
「えっ?!もう?!」

フードを被った大男の手錠が外れ、フードを脱いだ。
大男の身体にはたくさんの古傷と鍛え抜かれた筋肉。とても力では適いそうにない相手だ。

「お前の命いただくぞ!」
「!"漆黒の凶器(ブラックキラー)"」

大男は手に持っていた斧を大きく振りかぶってきた。
カメリアは咄嗟にシンプルな短剣を頭で思い浮かべて真っ黒な短剣を具現化させ、斧を受けた。

「!?なに!?」
「ったく!急すぎるのよ!!」

突然でてきた短剣と振りかぶった斧を受け止められたことに驚く大男。
オーラを纏ったカメリアはこの程度の攻撃は易々と受け止めることはできた。

「うおらああああああ!!!」

男はブンブンと斧を大振りするがすべて短剣で受け流す。

「どうした!受け流すだけで精一杯か??」
「くっ....」

人を殺したことがないせいでなかなか相手にとどめを刺すことができない。
かと言ってずっと受け流すだけでは前にも進めないし、降参もできない。決心するしかないのだ。相手は囚人。凶悪犯。
受身を取りながらカメリアは深呼吸をして、後ろに大きく跳び、大男から距離をとった。

「おいどうした。怖気づいたか??」
「そうよ...怖気づいてるのよ...」

頭の中でシンプルな飛び道具。千本を頭で思い浮かべ、右手を後ろに隠し3本具現化させた。
また深呼吸をする。

「そっちが来ねぇならこっちから行くぞ!」

大男がまた斧を振りかぶってこちらに走ってきた。

「ごめんなさい...ボソッ」

小さく呟いてカメリアは右手に持っていた千本を大男の額、胸、首を狙って投げた。

「はっ......?」
「.......」

何が起こったわからない大男はそのまま後ろに倒れ即死だったのか苦しそうな声もあげずすぐにピクリとも動かなくなった。
カメリアは倒れた大男から目が離せなかった。初めて見る死体....のはずだが不思議となんとも思わなかった。
先へと続く扉が重たい音をあげて開きハッと前を向いた。

「.....初めて人を殺したはずなのに.....なんだろうこの感覚....」

自分に違和感を感じながらもカメリアは次の扉へと向かった。

それからも"漆黒の凶器(ブラックキラー)"を駆使し、降参なし宣言をした相手は同様に千本で急所を狙って倒し、それ以外は短剣を首にあて、降参させ次々と扉を進んでいった。
全部で5人倒すと、トリックタワーの1階にたどり着いた。

「402番 カメリア 三次試験通過第一号!所要時間5時間33分!」
「えっ一番?」

たしかに制限時間をかなり残してクリアできたとは思っていたがまさか一番とは思わず驚いた。
残り時間は1階で待機と聞いてカメリアは壁にもたれて腰掛けた。

「疲れた....残りは寝よう....」


そう呟いて目を閉じた。






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