長編 書き場
□好奇
1ページ/1ページ
一悶着あった後、今度はまっすぐ図書館へと向かった。
「館長!ひさしぶり!」
「おぉ!カメリアちゃん!試験はどうだった?」
「じゃーーん!」
図書館に来ている人たちには見えないように隠れて館長にライセンスカードを見せた。
「まぁ当然だったね。楽しかったかい?」
「うん。怖い目にもあったけど...楽しかった!」
「そうかいそうかい。ところでなぜまた念がつかえなくなってるんだい?」
「いやぁ...さっき新人狩りにあって」
「返り討ちにしたってところか...やるじゃないか」
それから館長にハンター試験であったことをたくさん話した。館長も笑顔で聞いてくれた。
「いい経験になったみたいだね。ところでカメリアちゃん。これからどうするかは決めてるのかい?」
「うん。ヒソカさんやイルミはとても強かった。私も強くなりたくて...これからは強くなるために修行したいな」
「それなら近くにいい場所があるじゃないか」
「えっ?」
「ん?天空闘技場だよ」
「天空闘技場...?」
「カメリアちゃんはほんとに無知だなぁ」
図書館の近くに高い塔があることは気になっていたがそれが天空闘技場という名前でバトルの聖地だということを知らなかった。
館長にどういう場所なのか教えてもらうと修行するのにうってつけだと思った。おまけにお金も稼げる模様。これは一石二鳥。
「じゃあ次は天空闘技場かな!今日は大人しくここで本でも読むよ」
「そうかいそうかい。ゆっくりしていってね」
「はーい」
残りの時間は本を読むことにした。ここ数ヶ月で自分の無知さを思い知ったカメリアはこの世界についての知識を少しでも取り入れようと本を漁った。
2時間位経っただろうか。次の本を探すため席を立ちたくさん並んだ本を見渡すと流星街について標記されてるであろう本が目に留まった。
それを手にとってパラパラとめくる。
「この世の何を捨てても許される場所。」
「えっ?」
横から突然聞こえた声に振り向くとクロロがいた。
「あっクロロさん」
「やぁカメリア。久しぶりだね」
「今の言葉は...?」
「ああ、流星街はそう言われてるって話。所謂ゴミ捨て場だよね。表向きでは無人の街だが捨て子や犯罪者がたくさん住んでるみたいでね。社会ではそんな人間たちは生きてる価値なんてないってことなんだろうね。」
「そんなこと!!!」
クロロの淡々と話す内容に自分の存在が否定されてるように感じて図書館にいることを忘れ思わず大きな声を出してしまった。来館者から注目を浴びハッとする。
泣きそうな表情をするカメリアを見てクロロは目を見開き驚いた。
「カメリア...?」
「す、すみません...でも、流星街に住んでいる人だって生きる価値はあると思います...必死で生きて今私たちがしてるような普通の生活をしたいって思う権利くらいあると思います...クロロさんはそうは思わないですか?」
「.......」
クロロはなにも言わずカメリアを見ていた。
今にも泣きそうでこれ以上感情的に話してしまうとダメだと感じたカメリアはクロロを見て今できる限りの笑顔を作った。
「すみません。今日は帰ります」
「...っ」
カメリアを見てクロロは胸が締め付けられる気持ちになった。彼女はどうしてそんなに流星街の人間に感情的になってくれるのだろう。自分の故郷を肯定してくれ、想ってくれる人がいることが嬉しかった。自分の存在が認められた気がした。
ハッとするとすでにカメリアは図書館を後にしていた。
「はぁ...」
図書館を後にし天空闘技場の近くのホテルをとろうと歩いていた。
決してクロロの言葉ではなく世間一般の認識であるわかっていても正直聞いていて辛かった。寧ろそれが世間の認識であることが辛い。
「そこの君、ため息なんてついてどうしたの?彼氏にでもフラれた?」
「暇ならこれから遊ぼうよ」
「えっ?」
突然声をかけられ少し俯いていた顔を上げるとチャラそうな男2人が遊びに誘ってきた。所謂ナンパだ。
「おっかわいいじゃん」
「おいしいお店知ってるからいこうぜ〜」
「いや、ちょっと...」
「これから約束でも?」
「えっ?そういう訳じゃないですけど...」
「じゃあいいじゃん行こ行こ!」
「わっ!ちょ、ちょっと!」
一人がカメリアの腕を掴んで強引に連れて行こうとし、踏ん張るが男性の腕力に適わず引っ張られる。
抵抗できず困っていると誰かが男性の腕を掴み引っ張るのを止めてくれた。
「嫌がってるのがわからないか?」
「クロロさん!?」
「は?お前には関係ないだろ?」
「いだだだだだだ!!」
クロロは掴んだ腕を強く握ると男は悲鳴をあげてカメリアの腕を放した。
一緒にいた男はヒィと情けない声を出して逃げていき、悲鳴をあげた男も腕を放されると握られた腕を擦りながら逃げていった。
「大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます!クロロさん結構強いんですね」
「そんなことないよ」
見た目の細さと、頭に包帯を巻いてるせいかそんなに力が強いイメージがなかったのでギャップを感じた。
「でもどうしてここに...?」
「たまたま同じ帰り道だったみたいだね」
「クロロさんも帰るところだったんですか」
「家はこっち?」
「いえ、今日はホテルに泊まります」
「そうか、そこまで送っていくよ。またこんなことにならないようにね」
「えっそんな悪いですよ」
「遠慮しなくていいよ」
「それじゃあ...お言葉に甘えて...」
ホテルまで向かう途中、お互いの最近読んだ本の話をして歩いた。本の話をするクロロはとても楽しそうで自然とカメリアも笑顔になった。
楽しく話をしていると急にクロロは足を止める。
「その…さっきはすまなかった…」
「えっ」
クロロの表情が少し暗くなると、先ほどの図書館での出来事を気にしてか謝罪してきた。
「あ、それは気にしないでください!勝手に私が感情的になっただけですから!」
悲しそうな顔をするクロロに慌てて、ぶんぶんと両手を目の前で振ると今度はパァと明るい表情に変わる。なんて表情豊かなのだろう。
「よかった….嫌われたのかと思ったよ」
「そんな簡単に嫌うわけないじゃないですか」
一安心したようでまたカメリアの向かうホテルへと歩を進めた。
「わざわざありがとうございました」
「このくらいいいよ。また図書館には来る?」
「はい、また近いうちにでも行きます」
「それじゃあまた今度...かな?」
「はい!また!」
ホテルの正面に到着するとカメリアはクロロにお辞儀をしてクロロは手を振ってカメリアが中に入っていくのを見守った。
見えなくなったところで携帯電話を取り出して電話をかける。
「もしもしシャルか?」
「あ、団長?どうかしたの?」
「ちょっと調べてほしい奴がいるんだが」
「はいはい〜」