長編 書き場

□果敢
1ページ/1ページ




カメリアとヒソカが奮闘してる頃、クロロは以前シャルナークに頼んでいたある人物の詳細を聞くためにアジトに戻っていた。

「シャル、あの件はどうだ?」
「ああ団長、それなんだけど...」
「なんだ?」
「"カメリア"という人物の個人情報はどこを調べてもでてこなかったよ。一体誰なの?」
「ただの一般人のはずだが...」

シャルナークからの予想外の返答にクロロは頭を悩まされた。

「偽名か...?でも偽名を名乗る必要なんか...」
「団長がただの一般人を調べてほしいなんてなんか珍しいね」
「ちょっと興味があっただけなんだが、でてこないならしょうがない」
「もう少し調べてみるからなにかわかったら知らせるよ」
「頼む」

そういうとクロロはまたアジトを離れて街に足を運ぶことにした。







カメリアとヒソカの試合が始まって30分位が経ったであろう。
得点はカメリアが7ポイントヒソカが8ポイントと接戦である。
二人の激しい攻防に観戦している人たちは大声で煽ることはせず、完全に魅入っていた。

「す、すげぇ...」
「カメリアってやっぱり強かったんだね...!」

キルアとゴンもそのうちの一人である。
念を覚えたての二人からすればカメリアとヒソカの攻防にまったく追いつけていなかった。

「ハァハァ...さ、さすがに体力じゃ劣るか...」

点数では接戦に思えるがカメリアは息を切らす一方ヒソカはまったく息を乱しておらず、余裕の表情を浮かべる。

「まったく。ボクの念能力を使うなんてやっぱり君は面白いね♣でも、オリジナルには勝てない♦」
「そりゃあ実戦経験もヒソカさんのほうが断然上ですからね...でも私は楽しいからいいんです!」

こうやって全力で誰かと戦うことがなかったカメリアは勝てない相手とわかっていても全力をぶつけることをとても楽しんでいた。

「実はこうやって思いっきり戦うの初めてなんです。結構楽しいですね」
「そうなのかい?♠それにしては念の使い方が上手じゃないか♦」
「自分でいうのもですけど才能ですかね?気づけば念能力は上手く使えたんですよね」
「.......♦」

ふと"盗み喰い(アビリティハンター)"を使用してから30分近く経っていることを思い出したカメリアはそろそろ使用時間が終わると思い改めて戦闘態勢に入る。

「そろそろしゃべる時間ももったいないのでいきますよ!」
「ますます君に興味が湧いたよ❤」
「それは光栄です!」

カメリアが武器を手にしようと漆黒の凶器(ブラックキラー)を試みると地面には確かに砂鉄が散らばっているのに何故か武器が具現化しなかった。

「あれ...?」
「クックック♦今のおしゃべりの間に散らばった砂鉄をボクの"伸縮自由の愛(バンジーガム)"で地面と引っ付けちゃった♣」
「なっ!」
「さて、どうする?♠」

ニヤニヤと笑うヒソカはカメリア目掛けて地面を蹴り距離を詰めて拳を振るう。咄嗟にそれを避けるとなんとカメリアはなにもない空間から漆黒な千本を具現化させ、ヒソカの足を目掛けて投げた。

「!」

一瞬油断したヒソカだったがその千本を脅威の身体能力で避けると地面に空しく落ちた千本は砂鉄に戻った。

「おっと♦まさか砂鉄なしで具現化できるなんて聞いてないよ♠」
「元々砂鉄なしでは具現化できなかったんです。今回の特訓でその場に砂鉄がなくても具現化できるようになったんです。まぁもちろんこっちのほうがコストがかかるんですが...油断させて攻撃を当てるつもりだったのにまさか避けられるなんて流石すぎますよ!」
「なるほど♠それはまた便利になったね♦でも残念♠」

ヒソカが次の攻撃をしかけようと一歩を踏み出そうとするとなにかに足を取られ動くことができなかった。
何かと思い自分の足元を見ると"伸縮自由の愛(バンジーガム)"が足にまとわりついていた。

「"伸縮自由の愛(バンジーガム)"!いつのまに...♦」
「さっき投げた千本に仕込んでおきました。千本の落ちた場所をヒソカさんが踏んでくれるかは運でしたが油断しましたね!!」
「そこまで仕掛けてたとは流石だね♦まさか自分の能力で窮地に陥るなんて不覚だな♠」
「これでまたクリティカルいただきます!」

カメリアはゴツゴツとした手甲を自分の腕に具現化させ足の身動きが取れないヒソカに向かって物理攻撃を仕掛けようとする。手は自由なヒソカはカメリアの攻撃の受け身を取ろうとする。

すると突然カメリアの腕に纏っていた漆黒の手甲が蒸気のように消え、ヒソカの足を拘束していた"伸縮自由の愛(バンジーガム)"もスッと消えた。その瞬間カメリアの足がぴたりと止まる。

「.......」
「......?♦」

カメリアの先ほどのやる気に満ちた表情が一変、冷汗をかきとてもバツの悪そうな表情をした。すると右腕をまっすぐ上にあげ...

「参りました!!!!!!!!」

「え?♠」
「「は?(えっ?)」」
「「「「えぇ〜〜〜〜〜?!?!?」」」」


突然の降参にさっきまで奮闘していたヒソカはもちろん観客席で魅入っていたキルア、ゴン。そして一般の観客が呆気にとられ、驚きの声を挙げた。

『な、なんということでしょうか!!先ほどまで鍔迫り合いの戦いをみせてくれたカメリア選手が突然の降参を宣言しました!!!これにより勝者はヒソカ選手!!!しかし、一体どういうことなのでしょうか?!』


「カメリア...?♠」
「えっえっと...その、ヒソカさん!す、すみません!!!!!」

ヒソカの険しい表情にカメリアは後退りするといたたまれなくなり一言謝ると全力疾走でリングを降り、会場から姿を消していった。

「(どうしよう!ヒソカさん絶対怒ってる!こ、殺される〜〜〜)」

戦闘で苦戦し長引いたことにより盗み喰い(アビリティハンター)の使用時間が切れてしまい念能力がまったく使えなくなってしまったのだった。流石に勝ち負けどころか最悪殺されかねなかった為即座に棄権したのだがあまりにも突然だったので恐らくヒソカの不満は計り知れないことだろう。そう思うとカメリアは青ざめて自分の部屋まで無我夢中で走った。

「きゃっ!!」
「おわっ!」

あまりにも慌ててたせいで曲がり角で歩いていた二人組のうちの一人にぶつかってしまい尻もちをついた。

「す、すみません!!」

ぶつかってしまった相手の顔を見る余裕もなく謝ると即座に立ち上がり部屋に向かってまた走り出す。
その際にポケットから何かを落としてしまったが頭の中がヒソカに殺されることでいっぱいになって気付くことはなかった。
ぶつかった二人組の男たちは走り去るカメリアの後ろ姿を見てニヤリと笑った。







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ