長編 書き場

□回想
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今回のお話は石田スイ先生が描いたヒソカ幼少期の物語のその後の設定で書いています。

石田スイ先生のネームを読んでいなくても話には支障はありません!
※ヒソカの年齢は公式で公開されておりませんがこの物語では20代後半の設定で進めています。




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グラムガスランドを離れたときに変わった少女に出会った。
小さな集落の近くにある人気のない花畑で花をじっと見てるだけの少女。しかしその少女にはオーラが纏っていた。
モリトニオを殺した後だったこともあり気持ちが高ぶっていたヒソカは少女でありながら念を会得してることに興が湧いていきなりトランプを手に襲い掛かった。

「.......」

その少女は特に驚くこともなく黒い何かでトランプを持った手を止めた。

「いきなりなに?」
「へぇ♠」

簡単に止められたことに少し驚く。自分の腕に纏わりつくものをよく見ると砂のようなサラサラとしたもののようだ。砂鉄だろうか。

「うーん♠こういうのは操作系かな?♦」
「これだけでわかるんだ?君子供なのにすごいね」
「いや、君の方が年下だろう♦」

近づいてみると自分よりもいくつか幼いようだ。さっき念を知ったというのに自分より幼い女の子がすでに念を会得してその上表情一つ変えずに攻撃を止められたことに少しイラついた。

「君を殺したい♠」
「突然すぎて意味わからない」

持っていたトランプに念を込めて少女に向けて殺すつもりで投げた。
すると少女の背後から黒い針のようなものが大量に飛んできてトランプをすべて撃ち落され、少女に神速で背後に回られ素早い蹴りを入れられた。咄嗟に腕でガードするが次の蹴りには対応できず吹き飛ばされた。

「..っ!♦」
「......」

2度目の蹴りで後頭部を蹴られガードが甘かった為気絶してしまった。








「......♦」
「あ、起きた」
「なんで♠」
「なんでって...別に私は君を殺したいわけじゃないし...」

自分から攻撃を仕掛けて返り討ちにされた。しかも年下の女の子に、かなり屈辱だ。
しかし少女は特に責めてくることもなく隣にじっと座っていた。

「ねぇ君なんていうの?♣」
「カメリア。君は?」
「ヒソカ♠」
「ヒソカ、なんでいきなり殺しにかかってきたの?」
「気まぐれ♠」
「そう...」

会話が途切れ沈黙が続くとヒソカの方から話を振ってきた。

「カメリアはこの集落に住んでいるの?♦」
「ううん。ここから少し離れたところ」
「念は誰から?♣」
「勝手に覚えた。住んでる街の人に念が使える人、それなりにいたから」
「へぇ〜♠カメリアは才能があるんだね♦」
「そういうヒソカもすごい才能じゃん」
「....君に言われてもあんまり嬉しくないなぁ♦」

何気ない会話をしているとさっきまで無表情だったカメリアはニコリと笑うようになった。
ヒソカはカメリアの笑顔にちょっと照れる。
それから柄にもなく世間話をしているとカメリアはそろそろ...と言って別れた。

「カメリアか♦」

ただ立ち寄っただけの集落だったが自分より歳下でつよいカメリアが気になり数日その集落の周辺に留まっていた。

「あ、ヒソカ」
「やぁ♦勝負させてくれないかい?♠」

昼頃集落に来れば毎日のようにカメリアは訪れてきていた。なんで毎日来ているのか、どうしてここに住まないのか気にはなったがそれよりもカメリアと戦いたい好奇心が勝りそのことに触れることはなくカメリアを見かける度に決闘を申し込んでいた。戦うときはいつも初めてヒソカがカメリアを襲った花畑に来てやっているのだが、ヒソカは何度戦ってもカメリアには敵わなく悔しかったが不思議と苛立ったりはしなかった。

「君は本当に強いな♦」
「ヒソカも毎日成長しててそろそろ追い抜かれそうだよ」
「そうかい?まだ余裕そうに見えるけど?♣」

初めて会ったときよりカメリアの表情も段々柔らかく色んな顔をするようになっていた。
ヒソカもカメリアと手合わせすることが日課になり悪い気がしなかった。

それから1ヶ月ーー

カメリアもヒソカにかなり心を開いたようで初めて会った時の暗い表情はしなくなった。
いつものように手合わせが終わって並んで休憩しているとカメリアは少し寂しそうな顔をした。

「どうしたんだい?♦」
「ヒソカは強い人にしか興味ないの?」
「うーん♠そうかもね❤」
「じゃあ私がヒソカに負けちゃったらもうどっか行っちゃうの?」
「.....そう...かもね♠」
「そっか....」

明らかに落ち込んだように下を向いたカメリア。一時のの沈黙の後突然キリッとした表情でヒソカに向き合った。

「ヒソカ、私と決闘して!!
「決闘?♦」
「私が勝ったらヒソカの旅に連れて行って!」
「えっ?♠」

カメリアの予想外の提案に驚いた。正直自由に生きたいヒソカに連れは邪魔だと思ったがカメリアとの真剣勝負はかなり魅力的に感じた。

「いいよ♦1週間後でいい?♣」
「ほ、ほんとに?!うん!いいよ!ありがとう!!ヒソカに負けないように修行する!」
「明日から1週間手合わせはなしだね♠」
「わかった!じゃあ1週間後の今の時間にここで待ってるよ!」
「わかったよ♣」

カメリアはとても嬉しそうな顔をして軽快な足取りで帰って行った。
ヒソカは微笑んで後ろ姿が見えなくなるまで見つめていた。
これが最後の会話になることは知らずに......




――――1週間後


「カメリア遅いな♠」

この1週間ヒソカは集落にも花畑にも来ることはなく念を極めていた。
決闘当日は約束の時間に直接花畑に来たのだがカメリアの姿が見えなかった。
あの時の様子だとすっぽかすとは思えない。探そうにもカメリアの住んでいる場所は知らず集落くらいしか思い当たらずとりあえず集落の方に行ってみることにした。


「?なんかおかしいな♠」

集落に近付くと鼻につく匂いがしてきた。何かが燃えている匂いと血の匂いだ。急に胸騒ぎがしたヒソカは走って集落に入って行った。

「?!これは....♦」

目に飛び込んできたのはすでに焼け跡となった集落と大量の死体だった。死体は見慣れていたため吐き気などすることはなかった。
死体をよく見るとここの集落に住む人であろう人間が数人、それ以外に統一した服装の人間もざっと見ただけでも10人は転がっていた。恐らく盗賊に襲われたのだろう。死んでいるということは返り討ちにでもあったのだろうか。
しかし襲われたにしては集落の人間の死体が少ない。それにだれも武器のようなものは手にしていなく、盗賊であろう死体の傷は明らかに切り傷や刺し傷ばかりだ。
状況がおかしいと思いながら転がった死体を見て回っていると見覚えのある人が壁に寄りかかってうなだれていた。ここには見覚えのある人間なんて1人しかいない。


「!!..........カメリア........♠」


急いで駆け寄り身体を揺するが、グッたりとして全く動かない。顔は真っ青で触れるととても冷たく、息もしていなかった。ぱっと見外傷は少ないがなにか致命傷を負わされたのだろうか。
周りに転がってる盗賊の死体はカメリアが殺ったのだとすぐに悟った。盗賊にも念の使い手が居たのだろう、それと集落の人間であろう人の死体が少ないのはきっと庇いながら盗賊達と戦ったのだろう。そうでなければあのカメリアが死ぬなんて考えられない。

「カメリア.........♦」

ヒソカはカメリアをそっと抱き上げ、来た道を歩いて戻っていく。その間ヒソカは無表情でありながらどこか悲しそうな表情でカメリアをずっと見ていた。
呼び掛ければ目を覚ましそうなほど普通に眠ってるように見えるが、抱えている腕に伝わるカメリアの身体の冷たさがそれを否定していた。




ゆっくりと時間をかけて花畑に戻ってくるとヒソカはいつも手合わせをした後に2人並んで休む場所へカメリアをそっと寝かせる。

「カメリア♦決闘は...僕の不戦勝だね...♠」

今まで感じたことのない色々な思いが入り混じって自分でも訳がわからなかった。こういうとき人は泣くのだろう。しかし、不思議と涙は出なかった。

「それじゃあ僕は行くね♣バイバイ、カメリア♦君のことは結構気に入ってたよ❤」










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