長編 書き場

□兄弟
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ミケに追いかけられる。
攻撃をしてくる複数の執事に捕まらないように逃げる。
神経毒の量を少しずつ増やされ慣れさせられる。
イルミから投げられる針をとことん避ける。
試しの門を重しをつけたまま開ける。
イルミとの組手でボロボロにされる。

ここ1ヶ月毎日基礎トレーニングを詰まされ何度か死にそうにもなった。
神経毒も1ヶ月で克服してしまった。

「うん。毒耐性つくの早いね」
「1番要らない気がするんだけど....」
「じゃあ今日は終わり。お疲れー」
「今日も生きた」

今日も一日の訓練が終わり疲れ切ったカメリアはとぼとぼと屋敷に戻った。
最初のころは屋敷が広すぎて部屋にたどり着くまでに30分ほどかかってしまったがやっと慣れて10分で戻れるようになった。それでも十分広すぎる。

「うぅ....疲れた.....」

部屋にまっすぐ向かっていると正面からドスドスと歩く音が聞こえてきた。
今まですれ違っても執事の人だったが足音が全然違うことが気になり疲れ切って曲がった背筋をピシッと伸ばした。

「ん?」
「あ」

目の前に現れたのは高身長にかなり体格のいい男性。執事のような正装はしていなくただの部屋着を身につけていることからこの屋敷の住人と察した。

「は、はじめまして!先月からお世話になっているカメリアです!」

深々とお辞儀をしながら挨拶をした。この人も暗殺者。失礼があると殺されるかもしれない。緊張しながら顔をあげると最初不機嫌そうにしていた男性は目をぱちくりとした。

「は?君がイルミ兄が連れてきた子....?」
「えっと....多分そうだと思います」
「イルミ兄が友達を連れてくるなんていうからどういう人かと思えば女の子?!しかも幼いし可愛いじゃん!イルミ兄ロリコンだったのか?!」
「へ.......?」

唐突に独り言をツラツラと述べつつ取り乱したイルミを兄と呼ぶ男性にカメリアはどうしたらいいか分からずおどおどしていた。

「オレはミルキ。ネットや機械には詳しいから困ったらいってね」
「あ、ありがとうございます!イルミの弟さんでキルアくんのお兄さんですか?」
「キルアとも面識あるんだ。そうだよ」
「イルミから兄弟のことは聞いてなかったので知らなくてすみません....」
「まぁイルミ兄はそういう話しなさそうだな。それじゃあオレやることあるからまた」
「引き止めてすみません!」

足早にミルキはドスドスと廊下を走って行った。カメリアはふとミルキの発言を思い出してミルキの方を振り向いて叫んだ。

「私一応イルミと同い年なのでイルミはロリコンじゃないですよーー!!!!」
「えっ?」

言いたいことが言えて満足したカメリアは改めて帰路を辿った。逆に歩を進めていたミルキは足を止めて硬直していた。

「オレより歳上?」








部屋に戻ると毎日一直線にシャワーを浴びるのが日課になっていた。
借りている部屋には普通の家の一室ではありえない水回りが完備しているのだ。

「はぁ〜〜天空闘技場の部屋といい最近豪華な部屋に住みすぎて今までの生活に戻れなくなりそう」

ここ半年で目まぐるしい出来事に充実感を感じていたカメリアは死と隣り合わせの修行すらも幸福に感じていた。
シャワーを浴びて浴室で身体を拭くとバスタオルを巻きつけて出た。洗面所から部屋への扉を開くとカメリア以外いるはずのない人がそこには居た。

「ノックはしたけど返事なかったから入ったよ」
「イルミはデリカシーを身につけて!!!!!!!!!」

堂々とイルミがベッドに腰掛け待っていたのだ。カメリアは反射でバンッッと勢い良く扉を閉めた。

ぶつぶつと文句を言いながら服を着て部屋に出ればイルミは相変わらず無表情のまま首を傾げるだけでカメリアは深くため息をついた。

「それで、なんの用?」
「明日は訓練なしね」
「え?なんで?」
「母さんがカメリアに用があるんだって」
「イルミのお母さんが?」

まだ挨拶もできてないからちょうどよかったと思ったが一体なんの用事があるのだろうか。
ここ最近訓練続きだったので休憩という意味でもありがたかった。

「明日はカルトが迎えにくるってさ」
「カルト?」
「あー言ってなかったっけ?弟」
「ミルキくんとキルアくん以外にも兄弟いたんだ」
「ミルキは知ってるんだ?」
「訓練後にたまたま会ったの」
「ふーん」

“4人”兄弟ということを初めて知り1ヶ月も住んでて今日やっと一人に出会い改めて屋敷の広さを思い知った。
明日は初めてイルミのお母さんと弟のカルトくんと会えることを少し心躍らせ、また緊張していた。








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