長編 書き場

□強打
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一言も発することなく歩き続けること数時間、先ほどとは打って変わって人気もなく廃ビルが立ち並ぶ場所までやってきた。

「逃げようとしたら足折るね」
「......」
「まぁそう脅すな」

サラッと怖いことを言うフェイタンにカメリアは額に汗を浮かべて目を配る事しか出来ずそれをみたフランクリンが宥めた。

1つの廃ビルに入って行き大広間らしき場所に近付くと途端に緊張して足が止まった。早く行けとばかりにフェイタンから背中を押され突き飛ばされる形で大広間に出た。

「わっ!」

ドサッと前に倒れ地面に手を突き視線を感じたカメリアは地面に向けていた顔を上げて周りを見渡した。
するとポツリポツリと人が座っており即座にこの3人の仲間だと悟った。そしてその中に見覚えのある人がいた。

「えっ....」
「........♦」

ヒソカがそこにはいた。カメリアの方は見ず表情から意図は読めなかった。なぜそこにヒソカが居るのか訳がわからず名前を呼ぼうとした時だった。

「ヒ.....」
「えっ!見つけてきたの?」
「たまたま見つけた。シャルナーク、こいつで間違いないか?」
「僕も本人は知らないから団長が見ないとわからないね〜」

シャルナークと呼ばれた青年が場の雰囲気とは打って変わって明るい口調で話始めたため言葉を遮られてしまった。シャルナークはカメリアに近づきジロジロと様子をみて手を口元に当てなるほど。と呟く。

「団長の言う通り確かにオーラを感じない。これは一般人って思うのも当然だ」
「その団長って誰なんですか。なんで私のこと....」

何一つ状況が理解できず混乱していた矢先、背後からゾロゾロと人が大広間に入ってきた。その中にはまた顔を見知った人物がいたことによって更にカメリアを混乱させる。

「ゴ、ゴンくんとキルアくん......?」
「「カメリア?!?!」」
「お前も旅団の尾行失敗して捕まったのか?」
「え?どういうこと?旅団....って幻影旅団?」
「「え?」」

幻影旅団の尾行に失敗して捕まってしまったゴンとキルアは同じ状況に見えたカメリアもまた尾行に失敗して捕まったのだと思っていたが、カメリアはそもそも連行した相手が幻影旅団の一味だということを知らなかった。
そしてゴンとキルアの後ろからやってきた人物にもまた顔見知り....どころか昔から知っている人が現れる。

「えっ......」
「ッッ!」

マチだった。マチはカメリアを見た瞬間驚き額に汗を浮かべるがなにも言わず顔を背けてしまった。
そんなやりとりには気づかずノブナガが面白そうに会話に入ってくる。

「なんだぁ?カメリアって嬢ちゃん見つかったのか。まさかコイツらと顔見知りとはよ」
「見つかったってお前旅団に狙われるようなことでもしたのか?」
「いや....そんなことされる覚えはなにも....そもそも情報収集して初めて名前知ったくらいだし....」

たまにマチの方に視線をやるが変わらず目を背けておりあまり関わって欲しくないように感じたカメリアは今は口をつぐむことにした。

「あっ!」

会話が途切れるとゴンもまたヒソカを見つけたようで声を掛けようとしたのかキルアから睨みつけられなにかを察したのか隣にいたシズクに以前会って腕相撲したことがあることを告げた。
するとノブナガがゴンに腕相撲を提案し目の前で2人が腕を組む。
力の差は歴然でノブナガは地面にゴンの腕を打ちつけては何度も何度も仕切り直していた。
その間旅団の1人が鎖野郎と呼ばれる人に殺されたこと、そしてその殺されたウボォーギンとノブナガとの仲について涙ぐみながら語っていた。どんどんゴンの手の甲は血が滲んできてノブナガの腕の力も増していて見るに耐えない状況だった。
キルアが声を発せればキッと睨みつけられ、ゴン、キルア。カメリアに鎖野郎について心当たりがないか何度も聞いていたが皆心当たりなどなかった。

「仲間のために泣けるんだね。血も涙もない連中だと思ってた。だったらなんで、その気持ちをほんの少しだけでいいからお前らが殺した人達に....

なんで分けてやれなかったんだ!!!!」
「!!」

大広間中に響く声と共にゴンが初めてノブナガの手の甲を地面に付けさせた。
途端にフェイタンがゴンを抑え付け、キルアがゴンの助けに入ろうとするとヒソカがトランプをキルアの首元に当てた。

「動くと切る♠」
「なっ!」

ヒソカの行動にカメリアは戸惑った。元々ヒソカはゴンやキルアを殺すとは思っていなかったが今のヒソカは本当に動けば殺そうとしているように見えた。ゴンを抑えているフェイタンも腕を折りそうな勢いだ。

「(どうしよう.....このままじゃ2人とも....)」

なにも行動を起こさなかったカメリアは唯一自由な状態で2人を助けられるのは自分だけだと思った。

「(今....盗み喰い(アビリティハンター)さえ使えれば2人を逃すことができるのに....どうにか使えないか....)」

この状況でなにもできない自分に腹が立ってきた。

「(お願い....今回だけ.,...今だけ使わせて.....)」

そう強く念じるとカメリアにオーラが戻ってきているのを感じた。

「!♠」
「えっ?!ま、まずい....!」

カメリアの異変にヒソカとマチは誰よりも早く気づいた。無理矢理念能力を使うことだけは避けたかったマチが動き出そうとした瞬間だった。

ドゴォッッ

「?!」

カメリアの隣でキルアを抑えていたヒソカが思い切りカメリアを蹴り飛ばした。数メートルほど吹き飛びコンクリート壁に勢いよく打ち付けた。後頭部を思いっきりぶつけたのか身体よりも頭の方がズキズキとした。

「「カメリア!!!」」
「ヒソカ!!!!」
「ああするしかないだろう?♦ちゃんと手加減はしたさ♣」
「もっと別に方法があっただろ!」
「抑え付けたところで念を使われた方が君も困るだろう?♦」
「くそっ.....」

ゴンとキルアが名前を呼ぶ声が微に聞こえ、マチとヒソカがなにかを言いあっているのが見えた後カメリアの意識は途切れた。







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