長編 書き場

□花畑
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マチの年齢が公式で非公開なので夢主と近い設定で幼少期や流星街についても捏造してます。



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物心がついた頃にはすでに流星街に住んでいた。
同じ境遇の子供は多かった為特に思うこともなかった。
念能力を使う大人は多く存在していて不思議な存在でもなければちょっとコツを教えてもらえればいつの間にか感覚で使えるようになっていた。
その感覚を見込んだ長老が念について手取り足取り教えてくれたおかげで十分に知識を得ることができ周りからの将来の期待も高かった。
翌年には“自在の砂鉄(ブラックキラー)”を編み出し、大人にも匹敵するほどの念能力者となる。そして、歳の近い子供は
みんなカメリアを怖がり仲良くなろうとする者はいなかったが、唯一1人だけ歳が近く念を覚えたマチとは意気投合し仲良くなった。そんなある日ーー


「流星街の外ってどんな場所なんだろう」
「どうしたの急に」

毎日のように顔を合わせておしゃべりしていたカメリアがふと外の世界について気になりだした。

「私流星街しか知らないからちょっと気になって」
「じゃあさ、ちょっと出てみない?」

マチの提案にカメリアの表情がパッと明るくなる。

「出たい!!外の世界見てみたい!!」
「そう遠くなければ長老もきっと怒らないよ。行こ!」

マチがカメリアの手を取ると目的地が決まってるかのように迷わず一直線に走りだす。走りだして数十分、本当に人も動物もいなく如何に流星街が孤立した街だということが目に見えたが急に景色が一変し辿り着いた場所は生まれて初めて目にする大きな花畑だった。

「わぁ.....」
「実はここ知ってたんだ。カメリアにいつか見せたかったの」

花ですら見たことのなかったカメリアが視界いっぱいに広がるとても綺麗な風景に開いた口が塞がらなかった。
花畑に釘付けになっている様子をみたマチはニコニコしながらカメリアが言葉を発するまで待った。

「す、すごい...こんな綺麗なもの...初めてみた!」
「2人だけの秘密だよ!」
「うん!」

それからこの花畑にはたまにマチとこっそり訪れては寝転んだり花冠を覚えたりして遊ぶことが増えた。もちろん長老にはバレてしまい一度怒られたが、説得の末この花畑だけならと許しを得ることができた。
数ヶ月の時が流れ、カメリアは心を落ち着かせたいと思った時には1人でも訪れるようになった。
しかし、その日は花畑に見覚えのないものを発見する。

「?なにこれ」

厚めの本がいつも寝転ぶ場所に落ちていた。カメリアは文字を読むことができなかった為、本とは無縁なものだった。パラパラとめくってもなにがなんだかさっぱり。

「マチのかな.....」

すると急に人の気配を感じ咄嗟に身構えた。

「あ、それ私のなんだ!ごめんね!」

20代後半くらいであろう男性がこちらに向かって手を振りながら駆けてきた。オーラは一切感じない人間に警戒はしつつも殺気は抑える。

「ここに人がいるのは初めてだ。君は村の子?」

初めて見る流星街以外の人間にいきなり話しかけられてたじろぐ。

「ちがう....」
「そうか」

そもそもこの近くに村があること自体知らなかった。詳細を聞かれても答えないつもりでいたがそれ以上聞いてこなかったことに内心安堵していた。

「君は本は好き?」
「....私、文字読めない」
「えっそうなのかい?」

男性は驚いた顔をするとうーんと何か悩みカメリアに問いかけた。

「私が教えてあげようか」
「え.......」

思ってもなかった提案にカメリアはキョトンとした。
しかしまだ警戒はしていたため答えを渋っているとなんとなく察した男性は続けて言う。

「もし気が向いたらまた明日同じ時間にここにおいで!あ、その本は君にあげるよ!」
「あっ......」

男性はそのまま走り去ってしまい一瞬の出来事に戸惑ってしまった。
手に持ったままだった本をギュッと両手で抱きしめてその日は流星街に帰った。
街に戻るとマチと偶然鉢合わせしマチはカメリアの抱きしめている本に目が留まる。

「カメリア?どうしたのそれ」
「あ、マチ....なんか拾った」
「本?文字読めるの?」
「読めない.....」
「?????」

流石に人に会ったとは言えなかったカメリアは拾ったとだけ告げ足早にマチから離れた。



そして次の日、カメリアは昨日と同じ時間に男性が置いていった本を持って恐る恐る花畑に向かった。

「......」

いつもカメリアが寝転んでいる場所に男性は座って本を読んでいた。

「あ!来てくれたんだね!」
「......私も...本読んでみたいです」
「うん!それじゃあ文字を教えるよ!」

男性に向けてカメリアは初めて表情を緩めた。
それから週に2、3回程カメリアは一人で花畑に向かい男性から文字を教えてもらった。最初はずっと警戒していたカメリアも文字を覚えていくにつれてだんだんと警戒することもなくなったのだった。







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